第14話

 四月。

 今日から二年生。

 まずは準備室へ行って、去年お世話になったピアノに挨拶しに行こう。昨日そう思ったので、新しいクラスが発表される時間よりも早く校門をくぐった。

 ドアを開けると、見慣れた光景が迎えてくれる。カーテンと窓を開けて、ピアノのカバーを外す。

 椅子に腰掛けて目を閉じる。

 『愛の挨拶』

 ロマンチックで、語り掛けるような旋律にうっとりする。今年もよろしくね、とピアノに心の中で語り掛けた。

 窓のから見える、手入れされた花壇は、今は主事さんが手入れしているらしい。今年も綺麗に咲くといいな。と思いながら、次のは何の曲にしようかと考えていると、窓の外から女の子二人に声をかけられた。

「あの、篠村紗夜さんですよね?」

「そうですけど」

「私たち、去年から隣の美術室で、ピアノの演奏聴かせてもらってたんです」

「私、ずっと素敵だなって思ってて」

 近くで私の音楽を聞いてくれてる人が、ほかにもいたんだな。素直に嬉しかった。

「ありがとう、とっても嬉しい」

「私たち今年同じクラスなんで、よろしくね!」

「え? もう発表始まっちゃった?」

 焦った様子の私に、二人がけらけら笑って教えてくれた。

「うん、五分くらい前に!」

「そっかー、私クラス名簿もらって来るから一緒に教室いこうよ」

 二人の女の子は、「おっけー」と声をそろえた。

 私たちは廊下で落ち合って、自己紹介をしながら、二年生の教室がある去年の一個下の階まで、階段を駆け上がった。


 

 

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音色 楓椛 @rainy_moon

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