第7話

 駅のホームでミルクティーを飲んだ日から、一週間が経った。いつもの通学路を律月と並んで歩きながら、私は少しだけためらいつつも切り出した。

「好きな曲とか、ある?」

「ん?」

 なんで、と聞き返しながら律月はいつもの柔らかい表情で少しだけ私の方に顔を向けてきた。けれど私はそのまままっすぐ前を向いて続ける。

「この間、私の演奏をこそばゆいくらいに褒めてくれたじゃない。あと、聴かせてくれてありがとう、とか」

「うん、そうだね」

「私も、律月が演奏聴いてくれたり、一緒に帰りながら話せるの、嬉しいから」

「そっか」

「だから、私からも感謝で、何かできないか考えたの。だから、曲のリクエストとかないかなって。私に出来ることといえばそのくらいだし」

「え! いいの? やった!」

 律月は想像していたよりも喜んでくれた。

(こんなに喜ぶのなら、もっと早く言えばよかった。)

今にも犬のしっぽが見えそうな律月の嬉しそうな姿を見て、そう思った。

「じゃあ、明後日の部活さぼりの帰り、一緒に楽譜買いに行ってよ。僕が買うからさ」

「いいわよ。それに私が買うし。今回は感謝だからね」

「本当? じゃあ、お言葉に甘えることにするね」

 ルンルン、という言葉がこれ以上に似合う姿はないな、と苦笑いしてしまうくらい上機嫌な律月と、彼の家の前で別れた。

 律月が誰のどんな曲を選ぶのか、楽しみだな。



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