第18話 トキメキ

店舗にて仕事をスタートした僕は順調にお客様の指名もついてきて、

店舗の中でも力をつけてきた。


自分の目標としてはいずれ自分の店を持ちたいという明確な目標も見えてきた。


手技を重ねる度に、手の感覚が鋭くなり、

触るだけでその人の悪い部分が分かり、

一発で言い当てる事が出来るようになっていた。


医学書なども読み漁り、予防医学関連の講習会で医師との出会いもあり、

医療系の知識も身につけていった。


そんなある日の事、リョウコから連絡があった。


内容は久々に会いたいとの事だった。

何やら仕事の事で悩んでいると。


僕達は日取りを合わせて会う事にした。


リョウコは肩まで髪が伸びており、

綺麗な真っすぐなストレートヘアになっていた。

以前はボブで短かったので大分イメージが変わった。

さっそく、駅近くのカフェに入り、ソファに腰かけた。


「ヨウスケ、ありがとう。忙しいのに」


「大丈夫だよ。でもどうしたの? 急に」


「実はね、お店も彼氏も全然上手くいかなくてね」


「そうか。何があったんだい」


「お店は、店長のセクハラが酷くて、彼氏は無職になって遊んでばかりで……」


「仕事、プライベートの両方で……それは大変だね」


「そっちはどう?」


「僕の方は、整体の学校も無事に卒業して、順調に仕事をしているよ。

まぁ、店長はちょっと癖のある人で、

人に仕事を丸投げして帰ってしまうような人。

でも、僕の目標は独立開業だから、あまり気にしないようにしているよ」


「そうなんだ。丸投げする人いるよね。本当に無神経というか何というか」


「うん……。それで、彼氏は無職になってしまったの?」


「そうなのよ。何やら職場の上司と揉めたかなんかで急に辞めてきてしまったみたいで。まぁ、幸いにも同棲している訳ではないからまだマシなんだけれど、

あまり将来を考えられなくなってしまったというか。

好きな気持ちはまだあるんだけれど、何か不安よね」


「確かにそうだよね。でも、まだ彼氏若いでしょ? 

チャンスはあると思うよ。

俺だって色々あったけれど再スタート何とか切れたし……」


「ヨウスケはコツコツ努力出来るけれど、私の彼氏はそれが出来ないのよ」


「今は、少しショックを受けているんじゃないかい?」


「まぁ、それはあるかもね」


「うん、少しそっとしてあげるのも良いかもね」


「私の気持ちが冷める前には動き出して欲しいけどね」


「うん……」


「まぁ、彼にもそう言っているわ。このままだと気持ち、冷めてしまうわよと。彼は、私と絶対に別れたくないみたいだけどね」


そりゃ、そうだろう。

こんな美人なら。


そんな時、あの時の練習をまた思い出してしまった。


オイルで足をほぐしていたあの時、

ジャージ下の2人が融合されたであろうその神秘を僕はまた考えてしまった。

もう何度も、融合されたであろう。

最近のリョウコはどうなのだろう。


「そうだと思うよ。君みたいに綺麗で頭も良い女性、なかなかいないからさ」


「ヨウスケにそう言ってもらえると嬉しいよ。

ヨウスケは前に彼女いないって話をしていたけれど、最近はどうなの?」


「今は仕事に集中していて、恋愛とかそういったことはしていないよ」


「へー、そうなんだー、じゃ溜まってるんだね」


ブファー



僕は飲んでいた水を吐き出してしまった。


「冗談だよー、そんなに驚かなくてもいいじゃない。子供じゃないんだから」

小悪魔的な表情でリョウコはいじわるそうに言った。


「でも、急に言われたら誰だってびっくりするだろう」


「まぁ、そうかもね」


「うん」


「したくならないの?」


「え?」


「セックス」


「今は仕事に集中しているから」


「仕事に集中していたらしたくならないの? 絶対?」


「うん」


「嘘つき」


「なんでだよ」


「目をそらした」


「だからって」


「私には分かるのよ」


「超能力者かよ」


「そうかも知れない。ねぇ、入りたい?」


「何を言うんだよ。急に」


僕はあのジャージ下の融合点を想像してしまうが、我に返り、吹き飛ばす。


「ヨウスケ次第だけどね」


「何だよ。それ。駄目に決まっているだろ。

そんな関係ではないんだから。彼氏もいるし」


「それもそうね」


「そうだよ」


僕の心臓は心拍数を上げていた。


何も運動をしていないのに、

全力疾走をした後のように心臓が高鳴っている。

頬も熱い。


元彼女のミサとして以来、僕はしていない。


このような感情は久しぶりで、

自分にこのような感情がまだ残っていたとリアルに実感する。

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