第17話 けじめ

その後の研修では残りの3つの試験を行った。


リフレクソロジーはあれだけ苦戦したが、骨格矯正や、

身体全体の手技に関しては全て1発合格でクリアできた。


整体の学校を卒業は出来ていないけれど、

その経験が活かされたのだと感じた。


意外にもリョウコ、タクマ、ハルミは苦戦し、

練習に何度も僕も参加し、みんなの協力を全力で行ったが、

骨格矯正の試験に合格できたのは自分だけだった。


研修は終了し、

合格が出来なかったメンバーは直ぐに店舗でのデビューは出来ないが、

再度試験を受け合格する事でデビュー出来ると説明があった。


リョウコ、タクマ、ハルミは骨格矯正だけ合格出来ていなかったが、

後日の試験でしっかりクリアした。

さすがだった。


それぞれ別の店舗に配属され、僕達は、新しい道に向かい歩み始めた。


そして、店舗配属までに時間がある為、

僕はもう1度、自分の整体学校に行き、

テストを受ける事に決めた。


今回は本当に自信があった。


研修期間半年、全力で学んだからだ。

手の痛みも消えて、最高のコンディションだ。


試験がスタートし、僕は、軽擦をした。

いきなりほぐすと身体が驚いてしまうからだ。


お客様役に主訴を聞き、首肩とヒアリング。

先ずは、肩甲骨周りと肩をほぐしていく、

その後、首をほぐし、耳後ろの頭蓋骨と首のキワにあるツボ全てを1つひとつ丁寧に刺激していく。


そこで、強迫観念にてもう1度肩甲骨周りをほぐしたくなるが、

その侵入思考は無視をし、

ひたすら手順に意識し手技を重ねた。


ひたいには汗、そして、自分の手を見ると、

この手技に至るまでの景色が脳内に映し出された。


そう、リョウコ、タクマ、ハルミ、研修の先生。


沢山の人の身体を借りて訓練した事により習得したこの手技、

今、自分の手には自分以外の人の力もみなぎっているそんな気がして、

目頭が熱くなった。

そして、1つ、1つの圧に思いを込めて、自分の全力の愛を込めた。


「池上さん、本当に上手になりましたね。凄く練習したのが伝わってきました。合格です。その手で、たくさんの人を救っていって下さい。

卒業の証である、資格認定証をお渡ししますね」


「ありがとうございます! 

自分は向いていないのではと思ったこともありましたが、

今日まで続けてきて良かったです。

これからたくさんの人の心と身体をケアしていきます!」


「池上さん、期待していますよ」


僕はその先生の言葉を胸に、未来に向かって全力で生きていく事を決めた。

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