嫉妬

「シロ、今日学校は?」


「お休みだよ!今日はアカを家に呼ぶの!」


親友になってからというもの、シロはアカに固執した。

アカのことを褒める回数が増え、クロに構う回数は少なかったのがもっと減った。


クロはアカが嫌いになった。

恩人に愛されたいと思っていたから頑張って我儘言わなかったのに、自分には興味も示してくれない。

これじゃあまるで...。


「シロ、シロはボクのことどう思ってるの?」


「たまたま拾った鬼の子だけど?」


やはりシロの中でのクロの印象はその程度だった。

クロはアカを殺そうと思った。


「じゃあ、アカを迎えに行くから。」


クロの視線に気づかずにシロは出て行った。


クロは力を失ったって鬼だ。

ここにいてはいけない異様で凶暴な存在。

それは少しは残っている筈だ。


「自分の食べるものは自分でとるよ。」


そうすればいい子いい子と褒めてくれるかもしれない。

クロはシロに愛してほしかった...。




「お邪魔します!」


アカが入ってきた。

靴を揃えてお辞儀をして、上品に。

それでも犯罪者は犯罪者。

シロが彼女を気に入っているのもきっと

仲間だからだ。

クロがアカを殺せばアカがいなくなる代わりにクロが人間の法律上での犯罪者になる。

そうすればクロはアカの地位を奪い取れる。


けれど殺そうという選択肢は取らなかった。

嫌われてしまうから。

クロが殺したってばれてしまう可能性が高いから。


「いらっしゃいませ...です。」


「クロくん、いらっしゃいましたよ〜」


クロにそういうとアカはシロと一緒に勉強をしたり、遊んだりし始めてしまった。


クロは機嫌が悪かった。

シロを取られた。

元々自分の物ではなかったけれど、そんな気がしてならなかった。


クロはシロに振り向いてもらうため、アカを殺さずに陥れようと決めた。

そうすれば、一番近くにいて自分の犯行を黙認しているクロだけを必要としてくれる。


シロはクロの食事のために犯罪を犯している。それをクロが隠蔽する形で食べているけれど、シロに聞いた限り、アオが秘密を握っている。シロとアカの罪の秘密を。


シロはアカと昼寝をしている。

呑気に手なんか繋いで。


クロの嫉妬心は大きくなって、決意は固まった。




音を立てないように家を出ると、ギリギリ残っている鬼の力で身体能力を強化して一っ飛びでアオの家まで行く。


ピンポーン...。


ガチャ。


「頼みがある...です。

シロの罪を警察に言ってほしいです。」


「な、なんだよいきなり。

そんなことしたらシロが俺の罪まで言うだろ?」


「大丈夫です。それはアカのせいにしてしまえばいいですよ。ボクが手を回すです。」


「俺はアカが好きなんだ、そんなことするかよ。」


「愛しのアカはシロにご執心です。

シロが刑務所に入るならきっとアカも入りたがる。貴方はアカがシロに取られたままで満足です?きっと嫌だと思うですよ。

だから、一度陥れるです。

貴方はその撮った映像をボクが指定した相手に渡せばいい。そうしたら貴方から流れたって伝わらないですよ。

一度シロと引き剥がされたアカが誰を頼るとお思いです?貴方ですよ。

そしたら、付き合うことも可能かもです。」


その言葉にアオは反応した。

クロにもメリットがある。

シロを通報しようと、目的はアカの罪をバラすこと。

シロが捕まるようなヘマはしない。


「バレないようにやればの話ですがね。」


「わかった。誰に渡せばいいんだ?」


「そうですね...。ちょっと待ってて下さい。」

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