第11話 生家の晩餐

 晩餐は、素領地の秋野菜をふんだんに使った料理だった。秋鮭は胡麻をまぶした照り焼きだった。


(わたしは好きなのだが、聖神殿育ちのタルヴィッカ様のお口には合うだろうか……)

 そんなことを考えてしまう中、晩餐はあまり口数は多くなく進んでいった。


 はじめの話題は、イヴァンナ様のご結婚のことだった。イヴァンナ様とお母様とが和やかにイヴァンナ様のお相手の人となりを話し合われていた。若輩者のわたくしには、イヴァンナ様の旦那様のお話の細かなところは理解できない。ただ、わたくしは、謹慎中の身の護衛騎士を引き受けていただき親身に接していただいたお礼を丁寧に述べた。ほんとうにわたしは、一人ではあそこから抜け出せなかった……

 

 話題を替え、タルヴィッカ様へと話しかけられたのはお父様だった。タルヴィッカ様に、普段は口数が少ないお父様は、魔導剣士について真面目な質問をいくつもなされた。イヴァンナ様と比べ線が細く緋若さは否めないであろうタルヴィッカ様は、魔導剣の成り立ちからの話を丁寧になさっていた。

 

 晩餐の主料理メインディッシュが終わった頃に、お父様がわたしに話を振ってこられた。それまで聞き役だったわたしは、これからのことを問われ、お父様とお母様とを見据え、昨今のわたくしの不祥事をまずは謝った。それから、わたくしは、今後は「魔導剣士を目指したいと、考えています」と述べた。お父様はわたくしのこれまでに厳しいことは何もおっしゃらないまま、「タルヴィッカ様のような心意に達することは容易なことではないと思うが」とだけ述べられた。……わたしとっさに答えられないままに、「すべては天上の女神様のお導きがままに」とだけを深い考えなくお父様に返してしまった。女神様からのお咎めはなくお父様もわたしの返しについて深く問い返すことはなかった。

 

 ✧

 

 晩餐を終え、わたしは側付きのエイラを伴い、自室に戻った。ありがたいことに、わたしはお父様お母様に赦されている。イヴァンナ様に見守られてきた……せめて、タルヴィッカ様のお力になりたいと、だけ思い眠りについた。

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