ゲームその2 『子ブタ村と目覚めるオオカミ』第9話

「なるほど、ウリリン君の手前側と、真ん中あたりに集中して家が建てられているね。ウリリン君の手前側にはわらの家が、真ん中あたりはプリン君が建てた木の家が多いなぁ。それじゃあおいらは、まずは真ん中のこの森にオオカミトークンを置こうかな」


 ワオンはオオカミトークンを1つつまんで、それから正三角形の真ん中あたり、ちょうどとなりにブーリンのわらの家、そしてプリンの木の家が建てられている森へと置きました。プリンが真っ青な顔でワオンを見ます。


「どうしよう、とうとうオオカミが目覚めちゃったよ! あぁ、だからやっぱりみんなで森に建物を建てておいたほうがよかったんだ。このままじゃぼくたちみんな、食べられちゃうよ!」


 ガタガタふるえるプリンでしたが、ブーリンは自信満々でにやりと笑ったのです。驚くプリンに、ブーリンは胸をぐいっとそらしました。


「あたふたするんじゃないぞ、プリン。なんのためにわしが、どんどんわらの家を建てていったかわからんのか?」

「なんのためって……あっ!」


 ブーリンが先ほどもらった猟師トークンを指でつまんで、見せびらかすようにふったのです。プリンがなるほどとうなずきます。


「そうか、それを使えば、オオカミトークンを!」

「そうさ。しかもワオンのやつ、まんまとわしの家のとなりにオオカミトークンを置いたからな。さぁ、それじゃあわしの手番だ。もちろんここのわらの家に、猟師トークンを置くぞ!」


 ブーリンはすぐさま、ワオンが置いたオオカミトークンのすぐとなりに、猟師トークンを置いたのです。


「これでオオカミトークンは、猟師トークンといっしょに取り除かれちゃうわね。ワオンさんったら、もうちょっとフィールドをよく見てから、オオカミトークンを出したほうがよかったんじゃないの?」


 モンブランケーキの最後のひとかけらを、フォークで刺してパクリと食べてから、ルージュがおかしそうに笑いました。しかし、ワオンはなぜかくやしそうな顔もせずに、へへっとほくそ笑んでいたのです。ルージュは「ははーん」と納得したようにうなずいて、それからちらりとプリン、そしてウリリンを見ました。


「でもよかったぁ、これでひとまず安心だね。じゃあ今のうちに、残っている森と山に家を建てていこうよ」


 そういって木の家トークンをつかむプリンに、ウリリンが待ったをかけました。


「ちょっと待って、少しだけ考えさせて」


 目を皿にして、フィールドを観察するウリリンを、ブーリンが意地悪くせかします。


「おいおい、お前の手番でもないのに、どうして待たなくっちゃいけないんだよ? プリン、お前の手番なんだから、さっさと木の家を置いて森を埋めちまえよ」

「だから待ってってば! プリン兄ちゃん、まだ置いちゃダメだよ。……もし今木の家を置いたら、多分おれたち負けちまうぜ」


 自分の手前側の陣地をしっかり見ながら、ウリリンがプリンを止めます。プリンはおろおろしていましたが、持っていた木の家トークンをそっと手元に戻しました。


「いったいなにを考えているんだよ? オオカミトークンはやっつけたんだし、あとはもうおれたちの勝ちじゃないか。それなのになにを迷うことがあるんだよ?」


 ブーリンがさらにあおるようにいいます。すると、ウリリンがムッと顔をしかめて聞き返したのです。


「でも、またオオカミトークンを出されたらどうするつもりだよ?」

「あぁ、なんだ、そんな心配をしてたのか。どうせお前のことだから、わしが考えも無しに家を建てていたと思っているんだろう? 残念ながら、わしはきちんと考えているぞ」


 ブーリンがにやにやしてからいい返すので、ウリリンはわずかに首をかしげました。


「どういうこと? ブーリン兄ちゃんは、いったいどんなこと考えてるっていうんだ?」

「なんだ、じゃあウリリンは気づいてなかったのか? ふふん、やっぱりわしのほうがちゃんと考えているってことだな。じゃあ教えてやるが、今フィールドには、全部で18軒家が建っている。それに対して、オオカミトークンは残り2つだ。そしてオオカミトークンの点数は1つにつき7点。つまり、どう頑張ってもワオンは14点しか稼げないってことだよ。つまり、わしらの勝ちってことじゃないか」


 胸をはって自信満々にいうブーリンでしたが、ウリリンは感心したようにブーッと鳴いたのです。これにはブーリンも驚いてしまいました。


「あれ、なんだよ、お前がわしのいうことにかみつかないなんて、めずらしいじゃないか」

「だって、ブーリン兄ちゃんがそこまでしっかり考えていたのが、うれしくってさ。おれはてっきり、また考えなしにどんどん作業を進めていたのかと思ったけど、よかった、違ったんだね」


 なんだかほめられているのか、バカにされているのかわからない感じのいいかたでしたが、ブーリンはもうほくほくに顔をほころばせて、へへへと照れたように笑いました。


「へへっ、なんだ、お前けっこうかわいいところあるじゃんか。ま、とにかくわしもしっかり考えているってことだよ」

「だけど、残念だけどこのままじゃやっぱり負けちゃうよ」

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