ゲームその2 『子ブタ村と目覚めるオオカミ』第7話

 ワオンが今まで話したルールを、簡単にまとめて説明しました。それによると……。




~『子ブタ村と目覚めるオオカミ』のルール~


1.プレイヤーは、子ブタ村のプレイヤー側(3人)とオオカミプレイヤー(1人)に分かれます。子ブタ村のプレイヤー側は、まずは協力して、オオカミプレイヤーに勝てるようにがんばりましょう。オオカミプレイヤーに勝ったあとは、子ブタ村のプレイヤーたちで一番を決めます。


2.子ブタ村のプレイヤーは、先に10ターンのあいだ、自由に建物を建てていきます。11ターン目からは、オオカミプレイヤーも動くことができます。最終的に、オオカミプレイヤーがオオカミトークンを3つ出すか、フィールド上の森と山が全部建物や荒れ地で埋まると、ゲームは終了して、まずは子ブタ村のプレイヤー3人の建物の合計点と、オオカミプレイヤーの点数をくらべます。子ブタ村のプレイヤーが勝ったら、そのまま今度はそれぞれのプレイヤーの建物の点数を計算して、一番を決めます。


3.フィールドはランダムに平地、森、山がちりばめられた、正三角形の形をしています。平地は18枚、森と山は9枚ずつあります。子ブタ村のプレイヤーは、自分の手番になるとフィールド上の好きなタイルに、家を建てていきます。平地にはわらの家、森には木の家、山にはレンガの家が建てられますが、わらの家は1ターン、木の家は2ターン、レンガの家は3ターン建てるのに時間がかかります。たとえばレンガの家を建てることにした場合は、レンガの家が建つまで、つまり3ターン経過するまで、自分の手番は飛ばされてしまいます。

また、一人のプレイヤーが初めてフィールド上に建物を10軒建てると、猟師トークンを1つごほうびにもらえます。猟師トークンは、自分の手番に建物を建てるかわりに、自分が建てた好きな建物に置くことができます。猟師トークンのとなりにオオカミトークンがある場合は、オオカミトークンと猟師トークンを同時に取り除きます。つまり、オオカミトークンをやっつけることができるのです。


4.オオカミプレイヤーは、11ターン目から動くことができますが、選べる行動は二つで、一つ目が新しくオオカミトークンを、フィールド上の建物が建っていない森か山に置くことです。二つ目はフィールド上にあるオオカミトークンを移動させることです。オオカミトークンが移動できるのは、辺で重なっているタイル、つまりとなりのタイルだけです。さらに、移動した先にわらの家、もしくは木の家がある場合は、その建物を壊すことができます。ただし、レンガの家はオオカミトークンでも壊すことはできませんし、レンガの家が建っているタイルは、オオカミトークンは通ることができません。また、壊された建物があったタイル、もしくはオオカミトークンが最初に置かれたタイルは、荒れ地に変わってしまいます。


5.ゲームが終了したら、点数を計算していきます。まずは子ブタ村のプレイヤー3人の、フィールドに残っている建物の数を数えます。途中でオオカミトークンに壊された建物はカウントしません。次に、オオカミプレイヤーの点数を計算します。まずはフィールドに残っているオオカミトークンの数×7がカウントされます。ただし、途中で猟師トークンにやっつけられたオオカミトークンはカウントしません。次に、オオカミトークンが壊した建物×3がカウントされます。この合計点がオオカミプレイヤーの点数となります。子ブタ村のプレイヤー側と、オオカミプレイヤーの点数を比べて、勝敗を決めます。

子ブタ村のプレイヤー側が勝利したら、今度は子ブタ村のプレイヤー同士で勝ち負けを決めます。子ブタ村のプレイヤーたちは、自分たちの建物の点数を計算していきます。点数は、わらの家1つが1点、木の家、もしくはレンガの家1つが2点となります。これで一番点数が高かったプレイヤーが、一位となります。


 ……というルールとなります。さぁ、それではいよいよゲームの開始です!




 じゃんけんの結果、子ブタ村のプレイヤー側は、ブーリン、プリン、ウリリンの順で進めることになりました。ワオンは目覚めを告げる時計の針を、さっそく1に動かしました。


「さぁ、それじゃあゲームスタートだよ。……といっても、最初はオオカミプレイヤーのおいらは、なにもすることがないからね。君たちがどうやって建物を建てていくか、じっくり見物させてもらうよ」


 紅茶のおかわりを入れながら、ワオンがにっこり笑いました。縄をほどいてもらったルージュも、ワオンからもらったモンブランケーキを食べながら、ワクワクでいっぱいといった顔をしています。


「よし、それじゃあわしからだな。といってもわしの作戦は当然、どんどんわらの家を建てることさ」


 そういってブーリンは、自分の赤い家トークンの中から、わらの家を取り出し、フィールドの真ん中あたりにある平地にドンッと置いたのです。ウリリンが目を丸くしました。


「えっ、真ん中に置くの?」

「なんだよ、文句あんのか?」


 ギロッとウリリンをにらみつけるブーリンを、プリンがあわててなだめます。


「まぁまぁ、ブーリン兄ちゃん、落ち着いてよ。まだゲームは始まったばかりじゃないか。さ、次はぼくの番だね」


 そういって、プリンは自分の黄色い家トークンの中から、木の家を取り出しました。


「ぼくはどんどん森を木の家に変えていくよ。そうしないと、オオカミトークンがどんどん出てきちゃうからね」


 プリンはフィールドをさっとながめて、それからブーリンのすぐ近くにある森に木の家を置きました。


「あ、そうだった、プリン君、木の家トークンといっしょに、これも置いておいてくれ」


 ワオンが思い出したように、ビー玉ぐらいの大きさの、小さな時計の形をしたコマを1つ渡しました。三人は目をぱちくりさせてそれを見ます。


「これ、なに?」

「時間トークンだよ。ほら、木の家とレンガの家は、どっちも建て終わるまでターンがかかるだろう? で、いつ建てたかわからなくならないように、木の家は時間トークンを1つ、レンガの家は時間トークンを2つ置くのさ。それで、次のプリン君の手番になったときに、時間トークンを1つ取り除くんだよ。そうすれば、時間トークンがなくなって、家が建ったってことが分かるだろう?」


 ワオンの説明に、ブーリンとプリンは「なるほど」と同時に声をあげました。その様子が面白かったのでしょうか、ルージュが思わずくすりと笑います。ですが、ただ一人、ウリリンだけは、真剣な表情でじっとフィールドを見つめています。


 ――あら、あの目……。ウリリン君も気づいたみたいね。このゲーム、適当に家トークンを建てていくと、あとでオオカミトークンにどんどんやられちゃうってことを――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る