アサルト・オブ・ゴッデスⅠ
第1話 ポンコツ女神、襲来
遠くのほうで、あちこちから黒煙を上げているミィミ国。
俺たちはケィモ王の言うとおり、
そして肝心のエルネストたちだが――
あれっきり、俺たちを追ってくる気配はない。
てっきり、周り道でもされていると思っていたのだが、今のところ、俺たちは敵と遭遇することなく、ここまで来ている。
俺とアン、そして
「……リンスレット王女、なんと言っていいか……」
アンが申し訳なさそうにリンスレットの顔を見る。
対するリンスレットは、アンの顔を見ようとしない。
「今回の事は……その……」
「わかってる。
リンスレットがつぶやくような声で言う。
「え?」
「……それに、アンはあたしの命を救ってくれたしね。あの時、止めてくれなかったら……そもそも、あたしが外に助けなんて求めなかったら――」
「リンスレット王女……」
「……ていうのは、すこし強がりかも知れないけど!」
リンスレットはここでアンの顔を見た。
「いまは……そうね、ちょっと色々と整理させてほしいってのが本音かも」
アンが唇を噛んで黙り込む。
「それより……アン?」
「……なんだい?」
「ちょっとあなたに言いたいことがあるんだけど――」
リンスレットがそう前置きをすると、アンもゆっくりと、覚悟を決めるようにアンを見た。
「リンスレット〝王女〟は禁止」
「……え? でも――」
「堅苦しいし、もう国があんなになっちゃったから、王女でもないしね。普通に、あたしのことは、いままでどおり、リンスレットって呼んで」
「……うん、わかったよ。リンスレット」
「はい。これからよろしくね、アン」
二人はそう言うと、互いに頷いてみせた。
わだかまりやらしこりやらが完全に解消されたとは言い難い。
けど、これで前へ進むことが出来る……んだけど、問題は俺だ。
勢いで、なんとなくついてきちゃった。
普通に、のんびり異世界生活を送るならエルネストたちと一緒にいたほうがよかったんじゃないか? ……と考えてしまうのは、さすがにどうかと思っ――
「ダイスケ」
「ひぇぇ、ごめんなさい!!」
急に声をかけられ、心臓がドクンと脈打つ。謝罪の言葉を口にしてしまう。
「なにを謝っているんだ……君は……」
アンに呆れられる。
「……それよりダイスケ、君は本当に良かったのかい?」
「え? 良かったって……?」
「君には違う道があったはずだ。こんな道よりもずっと楽な――」
「いや、もう、どのみち戻れられないしな」
これは建前。
「こうなったのは俺の頭よりも体が先に動いたってのもあるし、なにより、その状態のリンスレットを放ってはおけない」
これは本音。
関わってしまったんだから、もう諦めるしかない。
アンの言葉を借りるわけじゃないけど、ここまで来たら最後まで見守りたいと思う。
……そう考えてみると、アンのあの言葉は、こうなることを予測していたのかもしれないな。
「だから俺は――」
「ありがとう! ダイスケ!」
ガバッと、モフモフが押し寄せてくる。
リンスレットに真正面から抱き締められた。
いい匂いとモフモフと
なんだこれは。
最初に俺を誘惑してきた獣人たちとは比べ物にならないくらい、抗い難い。
これがロイヤルモフモフ。
これがロイヤルプニプニ。
こんな状況なのに、不謹慎でごめんなさい。
そして、ありがとうケィモ王。
俺は……僕はいま、リンスレットを選んで、心の底からよかったと思っています。
『……スケ……ダイスケ……!』
なんだ。
遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
『小川大輔!』
「は、はい!」
思わず咄嗟に返事をする俺。
しかし気が付くと、周りの風景は白黒になっていた。
……なんだ?
俺はいま、リンスレットに抱き締められていて――
その隣では、アンが呆れたように俺を見上げていて――
もしかしてこれ、時間が止まっているのか?
いや、違う。
これはあれだ。
極度の興奮状態下における、人間の一種の回避行動なんじゃないか?
いま俺の脳内では、アドレナリンやらエンドルフィン的な物質が大量に生成されていて、この瞬間を全力で楽しもうとして――
『固まるな!』
「ごめんなさい! でもこれは男の
再び声をかけられる。
リンスレットでもアンでもない。
でも、この声に聞き覚えはある。
たしか――
「女神……様……?」
『そうだ。あの美しくて、仕事も出来て、さらに美しい女神様だ』
首をギギギと動かし、声の方向を見る。
そこにはこの世界に来る前、
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