世界で1番愛してましゅ…

 めでたいのかは知らないが、佐々木修哉ささきしゅうやの恋は無事実った…が、ここで問題がまた生じた。

 恋人ってなにするの?ということです。

 佐々木はいつもそれを考えて過ごしている。


「今日はやけに静かだが、佐々木どうした?体調が悪いのか?」

「俺だって静かな時ありますよ」

「そ、そうか」


 先生が心配するほどに佐々木の奇行は減った。

 相変わらず藤波紗江ふじなみさえをガン見したり、問題に解答している藤波の声をボイスレコーダー片手に録音していたりしている時もあるが落ち着いてきている。


「お前本当にどうしたんだ?なんか拾い食いしてきた?」

「何で俺が大人しいの皆口そろえておかしいって言うかな?!」


 それはお前がいつもおかしいからだ。

 佐々木自覚していないのかお前は、怖いよそれを無自覚でやってるの怖い。


 佐々木の回収役兼友人彼女溺愛男こと楠楓くすのきかえではお昼休みになり佐々木と教室で机をくっつけて昼食を食べている。


「なぁ楓、恋人って何するの?」

「…そりゃあお前デートするとかさぁ…え?てかお前恋人って…え?」

「藤波さんとお付き合いすることになりました」


 佐々木そのどや顔やめて欲しい腹が立つからそんな顔して報告しないで欲しい。

 楠は勢いよく立ち上がった。


「嘘だろ?!…エイプリルフールには早すぎるぞ」

「いやホントだって」

「お前いくら何でも夢の中で成功したからってそんな…」

「本当に何なのお前?!」


 涙目で楠に悲鳴交じりの叫び声を佐々木は上げた。



「ぐすん…ぐすん」

「悪かったってからかいすぎたって」

「ドゴン…ドゴン…」

「何かの足音?」

「具材…具材…」

「泣いてすらないなお前、ちょっと反省した俺の気持ちを返せ」

「ヤだね!」


 楠は無言で席を立った。


「ごめん悪かった!俺が悪かったから見捨てないでー!」


 佐々木さん楠に抱き着かないでください。

 男同士の需要無いです好きな人は好きだけどほとんどないに等しい需要やめてください。

 そんな人前で抱き着く恥ずかしさないのなら藤波にハグできるようになってください。


「やめろ!抱き着かれるなら彼女が良い!野郎はやめろ!」

「俺も嫌だよ?!俺は大丈夫みたいなのやめよ?!自分からやってるみたいなのやめて?!」


 教室でこいつらは何をしているのだろうか?

 いつもより騒がしさ2倍でお送りしております。


「佐々木くん」

「ひょわぁ?!何カナ?!藤波さん?!」


 おじさんみたいな話し方をして佐々木は返事をした。

 藤波はクスリと笑って佐々木を見ている。


「佐々木くんやっぱり私と話しているといつも緊張してるよね」

「そ、そんな事ないヨ?!」

「嘘だー」


 からかうように藤波は佐々木の頬をツンツンと突っついた。

 佐々木はそんな事されるとは思いもしなくて驚くのを通り越して無になった。


「ご、ごめん。怒った⋯?」


 無表情になった佐々木を藤波は怒っていると思ったらしい。


「怒ってないよ?」

「本当に?」

「本当だよ、藤波さんとそういう関係になったんだなって夢みたいだなって思ってて」

「夢って言うんだ佐々木くんは」


 藤波は不服そうな顔をして佐々木の服の襟を掴んだ。


「⋯?!」


 何が触れて離れた。


「ゆ、夢じゃないでしょ」


 目の前にはゆでダコのように顔を赤くしている藤波。

 佐々木はポカンと何が起きたか分からず口を開けている。


「藤波しゃん⋯しゅきです」


 佐々木は口からそんな声を出して乙女のような顔をしていた。










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隣の藤波さんに今日も恋をする 赤猫 @akaneko3779

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