くいだおれている街、大阪

33

「良い匂いがするな…」

「串カツ食いてぇ。」


あの後、無事地上に降りる事に成功した。

あのままだったら海に落ちていたが、どうにか身体を動かしたりすることでなんとか人気のない地上に降りる事に成功した。


めちゃくちゃ筋肉痛になったが。


恐らくの現在位置は大阪辺り。空から落下しながら確認したら教科書に載っていた大阪湾が見えたので間違いないだろう。

ちなみに、配信は中断されている。


「それにしても無常の世界って旨そうなもんがいっぱいあるんだな!」

「あ、ちなみにローズの本来生まれるはずだった国はメシマズ国として有名だぞ?」

「え?」


メアリーから貰ったメモ。

恐らく配信で見られないようにするためにこうやって渡したのだろう。

(イギリス…しかもガチの王室関係と来た…)

バレたら恐らくヤバい事になる。だが、どれだけの人間が動く事になるかなんて分からない。

「ま、なんとかなるか。」



それよりも今はお金が欲しい。

金策となるスキルロールとポーションはあるがそもそも売る相手が…って話なんだよな…


うん、路線変更。国のお世話になって世界を旅しよう。

多分国に監禁されたりするかもだけど、そこは逃げたり、利用したり。

まぁ、多分なんとかなると思う。最悪異世界に逃げたら良いんだし。


「な、無常はここの金は持ってんのか?」

「いや、無一文。だから今から目立つけど良い?」

「あ?何をするんだ?」


今は昼。休日らしく、家族連れもたくさん見える。

ちなみに今は気配遮断を使っている。ローズにも手をつないで目立たないようにしているが、手をつないでいると言うのに全然反応しない。いや、別に?反応して欲しいという訳じゃないんだよ?


「みっなさーん!こんにちは!いきなりすみません!異世界から帰ってきました無常仮寝です!」


一斉に周りの視線がこっちに向く。

お、早速スマホを取り出して撮影しようとしてる。

うウェーイ。ピースピース。


「みなさん。彼女は異世界から来ました!そこで日本のご飯や文化を教えたいのですが、残念なことに今の僕たちは無一文です。そこで、今から魔法使ったりスキルを使って色々見せるのでチップをもらえないでしょうか!」


そういうと、物珍しそうな人と僕に対して恐怖心を抱く人、そしてローズに自国の事を教えたい人で別れた。

僕に対して恐怖心を持っている人はすぐさまどこかに連絡しているが、残りの2つは近寄ってきてくれた。ありがたいね。


「結界、何も入れない代わりに持続時間は10分。あ、チップはそこの袋に入れてくださいね!」


アイテムボックスから出した小物サイズの袋を置き、スキルを使っていく。


「水を創造、錬成。」


再現するのはスライムだ。

創造で水を作り出し、錬成でまるでスライムが生きているかのように演出する。



「おお!」

「す、すげぇ!!!」

「魔法ヤバスンギ」

「何あれ!?」

「おもしろすぎだろ!」

「あれ、近づけないんだけど?」


反応もよく、袋にたくさんのチップが入っていく。

だってそりゃ、マジックでもチップって入るんだも。本物の魔法だったらもっと入ってもおかしくないでしょ?


「お次は!…ってローズも何かする?」

「おうよ!それじゃあ街を綺麗にでもしようっか!」


そう言うと街中に泡が出てくる。

泡は自分から動いて地面の汚れなどを拭いていく。

軽い泡は巨大なシャボン玉みたいになって空に舞っていた。


「すげぇぇぇェェェ!!!」

「マジか」

「良い匂いがする…」

「ローズちゃん可愛いよ!!!」


「そいつはありがとうな!」

そう言うと可愛いと言ってくれた人の周りに纏わり付くように泡が出てきた。


「こういうファンサービスってよくするの?」

「ふぁんサービスってよくわかんねぇけど、ま、宿だとよくするな。」


そんな事をしていると騒ぎを聞きつけた警察官たちがやって来た。


「コラ!何がどうなって…はあ!?」

「あれって、例の転移者じゃ…」

「と、とりあえずこの騒ぎを抑えるぞ!」


あ、どうやら店じまいのお時間が来たらしい。

チップを見ても5万円以上はある。まぁ、寝床は野外と考えて、飯と服とかに注ぎ込む事にしよ。

とりあえず諭吉を入れてくれた方、あざっす。マジで最高。


「おや、どうやらお別れのお時間が来たようです。では、皆さんご機嫌よう!!」


チップの入った袋を持ってすぐに結界を解除する。

人波が押し寄せてくるがローズと目配せをし、身体強化で地面を蹴り、ビルを飛び回る。


「お、あの人のボケっとした顔面白いな。」

「この建物ヤバすぎだろ!一体作るのに何十年…いや、どれだけの金がかかるんだよ!?」


そういった所もローズに教えていかないといけない。

そう思うと、今の自分はとても物語に出てくるような主人公をしているな、という人生への満足感が得られた。



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