色々短編集
侑李
ホラー短編 自殺スポットの橋
とある夏の日、少しの間夏季休暇をもらった私は1人で趣味の温泉巡りをしていた。
そして宵の口に入り運転にも疲れたところで、休憩がてらたまたま見つけたうどん屋に入り、山芋の入ったざるうどんを注文し出来上がるまで暫くかかるとの事なので待っていると、店の主人が突然奇妙な話をし始めた
「お客さん、余所から来たみたいだしこの辺の事はあんまり分からないでしょ、もしこの辺で大きい橋に迷い込んだら気をつけてね、あそこは・・・・・・」
その時ちょうどうどんが出来上がったようで店主は話を止めてしまった。気味は悪かったが空腹にはかえられず、私はうどんをスルッと完食すると直ぐに勘定をして店を出た。
そして家路に着こうと車のエンジンをかけカーナビの目的地に自宅周辺を設定して走り出す・・・・・・が、ナビの示す道をずっと走っているとどんどんどんどん暗く狭い道へと入っていく。
当初は(渋滞迂回する近道か?最近のナビは賢いなあ)などとのんきに思っていたが、チラッと方角を見ると自宅とは全くの逆方向に進んでいた。
ここで先程の店主の話を思い出し(まさか・・・・・・)と思ったが、どこか少し興味もあった私は最後までナビの指示に従ってみる事にした。
そして、私の車は何かに引き寄せられるように、ある一点を目指し走っていく。
「目的地周辺です」
其処はあの店主の言っていた大きな橋だった。
そしてなぜか私は車から降りて、橋の上を歩いていき、下の川を覗き込んだ。すると・・・・・・
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
言葉になっていない人の叫び声のようなものと、無数の手が此方に手招きをしているように見えた。
パニック状態になった私は、逃げるように車に戻り、走り出そうとするが、かけっぱなしだったエンジンが切れてセルも回らない。
車の外を見ると無数の手が迫ってきているのが見える、そしてもうダメかと思ったその時・・・・・・
かかった!
逃げるようにアクセルを強く踏み、今起きた事を誰かに伝えたくて、先程のうどん屋まで戻ると、店主が出迎えてくれた。
「おう姉ちゃん、その顔は・・・・・・見たんだな」
ちゃんとした人間がいた安心感からか、泣きじゃくる私を優しい顔で介抱してくれながら店主は話し始める。
「彼処は昔から自殺が多くてなあ、今はフェンスを高くしたり、優しい色にしたりして、対策を施してんだけど・・・・・・それでも飛ぶやつが後を絶たないんだよ」
「それで最近は遺書も残さず、自殺するような理由がない幸せそうなヤツが飛んだりしてんだ・・・・・・まあ非科学的な話だけどそれこそ何かに引き寄せらるようになあ、姉ちゃんみたいな人間は特に引き寄せられやすいかもなあ」
この店主はどうやら私の体質を見抜いていたようだ。
だとしたら私もあの橋で亡くなった自殺者達に引き寄せられたのかも知れない、或いは引き寄せられた者達が道連れにしようと・・・・・・
「まあ無事でよかった、うちは泊めてやれんけど今日はどこか泊まって明るくなってから帰んな」
店主にお礼を言いビジネスホテルに入って怖かったので明かりをつけたままで浅い眠りについた。
そして翌朝、チェックアウトして車に乗ろうと鍵を開けドアに手をかけた時だった。
フロントガラス、リアガラス、窓ガラス、そしてボディにも・・・・・・至る所にびっしりと人間のものとしか思えない手形がついていた。
それを見た私はまた気味が悪くなり、給油がてらガソリンスタンドで洗車して貰い、手形は消えたが帰り道に1人の筈なのに誰か乗っているような感覚があった。一応塩を撒き、しばらく乗っていたその車は後日、あの橋とは全く関係のない橋の上で突然故障し、廃車となった。
幸いスピードも出ておらず、怪我は軽傷だったものの、もしあの時、一歩謝り川に落ちていたら・・・・・・
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