街へ

街へ行く

ノウルの背中に揺られて、何日経ったんだろう。


多分一週間ぐらいは経ってる。と、思う。


僕らは今、見晴らしのいい視界の開けた崖の上に立っている。僕はノウルが猫が丸まるみたいに、ぐるっとしているから、その背中にもたれ掛かってルフラと遊んでいる。


森はまだまだ続いている。でも、いきなり森がなくなって、建物だらけの場所がある。


それぐらいに遠い場所に街はあって、街は遠目で見ても分かるぐらいに、活気に包まれている。今は夜だけれど、明かりが赤々とついている。


『どうやって、街に入るかだなあ・・・』


「『普通に入っちゃダメなの?』」


ルフラも僕と一緒のことを思ったらしく、ハモった。


『人間の世界は凄く難しいんだよ。暗黙の了解ってもんがあるぐらいに、人は協調性を求める。今は魔物は殺す対象だ。そこに我らが入ってみろ。この三人の中で一番最初に狙われるのは誰だ?ルフラ、答えろ』


ノウルに聞かれて、ルフラは言って良いのか迷っているようだけれど、ノウルの気迫に耐えられずに、口を開いた。


『・・・きっと、ちづきだと思う・・・』


『きっと、じゃない。絶対に、だ。人間も弱肉強食だ。弱いものが一番最初にやられる。分かったか?このまま入って一番危険な目に合うのは、ちづきだっていう事が』


「うん・・・」


そう言われても、僕には何をすれば良いのかわからないから困る。


『・・・はあ・・・、まあいい。明日に考えよう』


ノウルは自分の前足に頭を乗せると、目を瞑って寝息を立て始めた。


「ノウル、どうするんだろう・・・」


『わからない。でも、ちゃんとしたことだと思うな』


「なら・・・いいのかな?」


『本当はレドラが居た方が、安心なんだけど・・・三人とも俺には話してくれないから。皆、秘密ばっか。ただ俺にわかるのは皆、何かに焦ってる。多分、それにはちづきも関わってる』


「そうなの?ぼくに・・・」


ルフラは僕が俯いたのを見て、柔らかい肉球を僕の顔に押し当ててきた。


「うわっ、なに?なに?」


『ごめんね。不安にさせたね。悪気はないんだ・・・』


ルフラの尻尾と耳がションと下がる。


本当に可愛い。なんだか、ワシャワシャしてあげたくなる。実際にした。


「僕はだいじょうぶだよ。みんなが、いるから」


『ふへへ。なら良かった』


へにゃっと笑ったルフラにつられて、僕も笑う。


『可愛らしいのは良いんだが、早く寝ろ。我は二人もの子守はしたくない』


『「は〜い」』


ノウルが声を掛けて、僕らは揃って返事をして、クスクスと笑いあう。


すると、ノウルの尻尾が早く寝ろ(実際に言った)、とでも言うように、僕とルフラの視界を遮った。


その後、僕はすぐに眠りへと付いた。

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