後ろでは

レドラ視点


アーノルドが椅子に座って背もたれに体重を預けながら言った。


「ちづきはやはり何かあるのかもしれないなあ」


「どういう事です?」


水色の髪のものは無表情で問いかけた。


「あの年で、あれだけの聖獣達と契約してるんだぞ?しかも、意思疎通が可能だ。もしかしたら、子供じゃないのかもしれない」


「はあ・・・。まあ、父上へ早く報告したらどうなんです?」


水色の髪のものはめんどくさそうに言った。


そして、こちらへと寄ってきた。


「鳳凰様、さっさと出てきたらどうです?そんなとこで盗み聞きするなんて趣味が悪いんじゃないですか?」


どうやらバレていたようだ。観念して、二人の元へと飛んでいく。そして、アーノルドの前にある机に止まる。


「やあ、鳳凰様。ちづきはどんな子なんだ?」


『そんなにいきなり単刀直入に聞くのか?』


二人共微妙な顔をする。


?ああ、声を出していなかったな。ちづきとしか喋っていなかったから頭に喋りかけるのが癖になってしまっている。


少し考えて、人間になることにした。


「すまない」


「!?人間になれるのか?」


机の上に現れた私にびっくりした顔をアーノルドは見せた。


「ああ、喋るのに不便だからな。フフランも人間になれるだろう。契約したのにしらないのか?」


「そうなのか。後で聞いてみよう。」


そう言いながら、ふむふむと頷いている。


「早くお応えください。」


水色の髪のやつにギロリと睨まれる。


「ヨリック、そんなに睨まなくてもいいんじゃない?」


「そんなにヘラヘラしてるから、国王様につけ入れられるんですよ」


「ほう、お手付きって言うのは本当だったのか?」


「へ?」


アーノルドは呆けた顔をした。その反応に一瞬眉をしかめた水色の髪のやつは、こちらの方を一切向かずに言った。


「ああ、その噂、勘違いしなくていいですよ。ただ、気に入れられてるだけで、全くの事実無根なので。アーノルド様にそんな上手な芸当は出来ないですし。」


「え?でも、反逆心のあるやつを手懐けるのが楽しいって言ってたぞ?」


本当にこいつはこの国の中でも上位についているケンソーク家の者なのかと疑いたくなる能天気さだ。そんな簡単に他人の趣味を暴露していいのか?


そう思ったのは私だけじゃなく、水色の髪のやつも一緒だったらしく、目頭を押さえて、深い溜め息をついた。


「アーノルド様。あなた、よくそんな頭でやってこれましたよね。」


「なんでそんなに怒ってるんだ?」


「この先が心配になるな・・・」


「鳳凰様?そんなこと言わないでくださいよ。」


これはよっぽどの馬鹿らしい。ちづきを本当に預けていいのか不安になる。

まあ、一時的にここにいるだけだから別にいいと思うが。


「まあ、ちづきに関して、簡単に言えばな・・・神に守られた子供としか言えん」


「まあ、それだけでもあの子が凄い子と言うことはわかりました。」


水色の髪のやつは静かにこちらを見やると、はあ、とため息を付いて・・・っていうかこいつため息をよくつくな。


「それだけ鬱憤が溜まってるんですよ。見逃してください。で、鳳凰様これ以上居られても邪魔です。帰ってもらえますか?」


いつの間にか心の中を覗かれていたみたいだ。それにしても、シンプルにこいつは生意気だな。まあ、実際に邪魔にしかならないだろうからすぐに元の姿に戻り、窓へと足をかける。


「ありがとうございました。」


「さようなら」


二人それぞれの挨拶を聞き、飛び立つ。


この時間なら、ちづきは起きているだろうか。いや、確実に寝てるな。まあ、寝顔だけでも拝むとしよう。


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