経緯

「トラップにかかったというのは覚えているかな?」


「・・・たぶん。すごい、いたかったから」


薄く意識が上がったときに凄い激痛が走ったのは覚えてる。でも、すぐに沈んで、何かクスって笑っちゃうような夢をみてたんだけど、思い出せない。


「私達のせいで怪我をしたんだ。本当に申し訳ない。そこで提案なんだが、君が迷惑じゃなければこちらの方で君のことを預かってもいいだろうか?」


この男の人は何を言っているんだろう?預かるって?


「あずかる・・・?」


「ああ、意味がわからないか。まあ、はっきり言って、君のことを保護するということだ。我々の方で君のことについて話し合った結果、こちらの方で君のことを預からせてもらいたい。別に出て行きたくなれば、それでいい」


「ほご?」


え?チョット待って、この人、保護って言った?ってことはここにいることになるってこと?


「ああ、ダメか?」


「う・・・あ・・えっと・・・」


困って、レドラを見ると背中を押された。そして、なぜか笑っている。クルルクルルとご機嫌な音がずっと聞こえる。


ああ!これか!レドラがこのケンソークの人たちが言うことを聞けって言ったのは。こういうことだったのか!!


僕としては断りたい。けれど、レドラがご機嫌なのには理由があると思うし・・・。


「ずるいよ!」


『そう言わなければ、拒むだろう?』


「だ、だめだったか?」


拒むに決まってる。


「そりゃそうでしょ!」


『くふふ、しかし、約束したものは破れないだろ?』


「!?」


何故か男の人が傷ついた顔をしている。


『ち、ちづき。我らの声は男の人達には聞こえない』


『レドラの声が聞こえていないから、話が噛み合ってないんです』


『は、早く言いなおさなきゃ。受け入れてあげて』


慌てながら、ノウルたちが話しかけてくる。男の人の顔色が悪くなった原因は僕らしい。


「あ、あの、えっとちがくて・・・」


「ああ、すまない。いきなり過ぎたな。何かあったら呼んでくれ」


トボトボと悲しそうに男の人は扉の方へ向かっていった。


水色の髪の人は追いかけるつもりはないそうで、ただその人を見つめていた。


僕は慌てて金髪の人に抱きつく。というより、突進した。


「う”っ!!」


「えっと・・・、えっと・・・」


目をウロウロさせる。いい言葉が見つからない。


金髪の人は、片膝をついて、僕に目線を合わせてくれた。


「ゆっくりでいいよ。思ったことを話してくれ」


「うん・・・ぼくは、いやだけど、レドラたちがいいっていうから、ほごされる」


「保護されるって・・・。まあ、レドラって誰のことだい?」


金髪の人は苦笑して、レドラのことを聞いてきた。


「えっとね、あのとりさん」


レドラのことを指さしながら言う。


「ほう・・・」


金髪の人は意味ありげに顎に手を当てると、すぐに笑顔を作り直した。


すると、いきなり目線が高くなった。


「え?え?うわあっ」


「よかった!ありがとう!ありがとう!」


男の人に抱き上げられたんだと分かって安心する。今は高い高いをされている状況。だから、男の人の顔がよく見える。男の人はひどくホッとした表情で僕を見つめている。今さっきまでの雰囲気とぜんぜん違う。


驚いて固まっていると、水色の髪の人が金髪の人に耳打ちした。


「キャラ崩壊してますよ」


「あっ。すまない。変なところを見せてしまったな。」


二人の会話が面白くて思わず笑ってしまう。


すると、二人は固まってこっちを見たから僕は怖くなって、笑顔を引っ込めた。


「ああ、すまない。一緒に住むことになるんだから、家族を紹介してあげよう」


「お・・・おこられない・・・?」


「?ああ。私の家族は優しいからな」


それを言ったときに、金髪の人は今日一番の笑顔を見せた。つられて僕も笑顔になる。この人の笑顔は好きだ。


この人が笑顔になるほどに愛おしい家族だ。きっと、いい人なんだろう。


降ろしてもらって、一緒に歩いていく。この人と家族になれるのは、すごく楽しみ。

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