魔王

正義は水槽に似ている。


薄い硝子ことばに包まれ、突けば簡単にエゴが溢れ出す。


そんな脆いものに頼って僕に楯突くなんて。


言葉を返されて膝から崩れ落ちる、他国から来た勇者と名乗る男。


魔王を、魔族を倒すと生きがっていても真実を知ればその程度。真に醜悪なのは信じていた自国と宗教だ。


ただの他国の人間を魔族と言い、国王を魔王と呼ぶ。大々的な戦争ではなく勇者に討伐させる事で、失敗してもただの狂信者の暴走として片付けられる。


実にくだらない手だ。


しかし、だからこそやり易い。


「君を弄んだあの国に一矢報いたくはないか?」

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