第48話新大陸へ

「はあああ!?」


マトラの大きな声がくらい地下室に響き渡る


「ちょ、うるさいってマトラ…」


アエリアは耳を手で塞ぎながら言った


「なななななな……なんでえ!誰ぇ?」


「落ち着こう、マトラちゃん。で、ラライラちゃんどこ?」


「いやいやいや、ナターシャ様も鏡見ます?見た目おかしいですって」


マトラがそう言うと


「そう、私がアエリアだ!」


「私がナターシャだ!」


ドヤ顔で二人はそう言った


「わかってるけどわからない!なんで二人とも若くなってるんです!?」


「いろいろあった。以上」


「わかんないですって、てゆうかナターシャ様勝手に部屋から出ようとしないでくださいよ」


「えー。ラライラちゃん…」


「ラライラならあとで会えますって…とりあえず、ここじゃなんですし客間に行きますか…」


そうして二人を案内する

マトラはこの状況を飲み込めないでいるが、聡明な彼女である

表面上だけでもなんとか心を落ち着かせた


客間に案内すると、そこに一人の年若い男性が居た

そして二人が部屋に入るや否や


「臭いよ…。なにその二人…まるで死者の国から帰って来たみたいな臭いがする…」


そう言った


「ほう、わかるのか…うん?君はエルフだね」


「え、ええ、アエリア様に前お話したエルフのメイフルさんです」


「うん、僕はメイフル…ちょっとだめだ、この臭いはひどすぎる、はきそうだ。マトラ、二人を城の風呂に入れてきてよ…」


「ええ!?なんなんですかもう!臭いとか全然私分からないですよ!」




そうして、アエリアとナターシャは即座に風呂に案内された

そこは王宮でも裏の方にある風呂場だった


「まさか来て早々に風呂に入ることになろうとは…」


「ええ…でも気持ちいいわ…」


「そうだな、これほど清浄な気が充満している場所も珍しい」


そこは風呂場というよりもまるで聖域の様だった


部屋の隅に、白く輝く石が置いてあるのが見える


「なるほど…聖域化しているのか」


精霊石がそこにあった


「それにしても、臭いかーやっぱわかるんだね、エルフには」


「私におわないわよ」


「それはそうだ、魂を見るのはエルフの力だから…それどころか彼は臭いもわかるんだろうね」


「ふーん…どうでもいいわ。早くラライラちゃんに会えないかしら」


「君は本当に好きだね…」


「だって彼女、かわいいじゃない」



そして風呂を上がって、再び客間にいくとラライラが居た

腕の中に、小さな赤子を抱いて


「え、まって、ラライラちゃん。その腕の子供はもしかして…」


「あ、はい、私の子ですけど…あれ?なんかナターシャさんに似てる?」


「うっそすご、信じらんない。めちゃくちゃ可愛いわ…初孫見たときくらい私興奮してる」


ナターシャはラライラの傍に行くと抱かせてくれと目を輝かし、子供を奪い取った


「え?ほんとにナターシャさんなんですか?じゃあ、そっちが…」


「そう、私がアエリアだ」


「それはもういいですって…それでメイフルさん、これでいいのかしら」


「ああ、大丈夫…一応、浄化されたみたい」


四人は長椅子に腰を下ろすと、城のメイドがお茶を持ってきて四人の前に並べる


「ああ、ようやくココに来れたよ…新大陸」


「はい、お待ちしておりました」


「それで、状況を教えてくれない?通信がここ数か月殆ど取れなかったし、一度の通信もすぐ切れちゃったから分かってないんだけど」


「ええ、お話させてください。それと、そこまで大した事件のようなことには発展していませんし」



そこからマトラが相変わらずの調子で説明してくれた



この大陸の全貌は不明

ただし今現状分かっているだけで、エルフの国、人間の国、亜人と呼ばれる者の国、そして、魔族と呼ばれる者の国に分かれている


ここノーチェスはそのうちのエルフの国近くにある山脈に転移してきており、現状エルフとは仲良くできているらしい


そしてそれが判明したのはわずか二年前で、マトラとラライラがこちらに来てからという事の様だ


それは一重に、マトラとラライラがエズラの所で修行をしていた成果だという事の様である


「エルフ達の国と言ったか、人口は多いのか?」


「そうですね、おそらく8000人と言ったところでしょうか。ただほかの国と比べて人口も少ないため、ほとんど隠れるようにして居ます。恐らくは他の国々も、エルフの国がある程度には知っているようですが、どこにあるかなどは知らないようです」


「亜人の国とは少し国交はあるけどね、他の国とはないよ。このノーチェスとはマトラとラライラが居るからかなり特別だね。エルフに師事していた人間だから信用が置けるし、それに……」


どうやらエズラに教えを受けた事が本当だと証明できた時点で、ノーチェスはかなりエルフに近しい国となったようだ


そもそも近いところに転移したというのはあったらしいが


「それは何よりじゃないか、私も一度国に行ってみたい所だね」


「かまわないよ、今の君たちからは精霊の声が聞こえるし…エルフの国、サジェス国は君たちを歓迎するよ」


そうメイフルは言った


「精霊の声か…もしかしてスケル達の事か?」


それにはマトラが答える


「ええそうですね。この大陸では本来霊獣という存在はエルフにしか仕えないものらしいです」


「そうか、人は…霊獣から見放されているのか」


よくわかりましたねとマトラは言った

そして亜人達も、わずかながら霊獣を従える者がいるらしく、それで国交があるのだとか



そして、連絡が取りにくくなっていた理由についてだが



どうやら聖石による結界を強めた事が原因の様だった


そして強めた理由は



「街の人間がいつの間にか、他の国の人間を引き入れて居たみたいでして」


「成程、そしてエルフと仲が良いと知ると手のひらをかえしたか?」


「近い、ですね。彼らに紛れ込んでエルフの国へ侵入、そして何名か……攫われた様です」


「それは度し難い、ですわね」


「ナターシャ……聞いてたのか」


「ええ、聞いてますよ」


「そして更なる被害を防ぐために、現状他の人間が入れないように結界を強めたのか」


「はい、それで今は国を覆うように城壁を建設中です。エルフ達も手を貸してくれていますがなにぶんにも広いので時間がかかっています」



そこまで聞けばアエリアにはこれからしなければいけないことが決まる



「分かった、じゃあ私はこれから攫われたエルフを捜すことにする。ナターシャは……まあ、ここに居てもらうか。戦力にはなるよ」


「ありがとうございます」


「とりあえず攫われたエルフの人相書きとリストをくれ。出来ればこの大陸に詳しい人間が居ると助かるが」


「僕が行くよ」


メイフルが手を上げる


「大丈夫なのか?」


「魔法で見た目を変えればね。それに僕はハーフエルフだ……人間の国には詳しいんだよ」


「分かった。では頼む」



そうして、アエリアは人間の国へ攫われたエルフを探しに出ることになる


ナターシャはお留守番と言いたいが、人間の国が攻めてくる可能性を考えての護衛である

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