第12話戦乱凶狂?

アリエッタの戦争の始まりはクーデターから始まっていた


このクーデターの元々のきっかけはアリエッタがある聖獣と契約した事に単を発したものだ


当時末端の貴族であったアリエッタがひょんな事から契約した聖獣がいた

それを寄越せと言ってきたアエリアの居た国の王族が、その聖獣の怒りを買いその聖獣に殺されてしまう

その責を問われて死刑になることが決定した時よりアエリアの生きるための戦いが始まったのだ


契約していた聖獣の力をもってすれば、その国を制圧する事は容易かった


聖獣とアリエッタの相性が良すぎたためだ


しかしながら、問題は他にある事を知る


腐敗し切っていたのだ、その国と貴族達は

そして王国軍と戦う際に真っ先に降伏してきた貴族達の中には実力者もかなり居たのだ


アエリアの生きている世と違い戦乱の世であったことも大きい

比べれば人口は少ないものの、強力な力を持つものが多かった



王族は皆、特別な力を持っていたし、貴族達も皆その名に恥じぬ戦力を有する、そんな時代






「第二王子と、第一王女は無事保護できたようだ」


隠れ家とも言える、薄暗く埃臭い地下にアリエッタらは潜んでいた


この時はまだ信頼できる仲間、少数だけで動く事が多かった様に思う




「そう、それは何よりな報告だ」


アシュトーが持ってきた報告に、ほっとする


既に王国の主導権はアリエッタの物となっている

軍部の掌握が済んでから、貴族達の動きは早かった


かなりの数の腐敗した貴族や役人を処分したように思う


だが追い詰められた貴族達はその小さくない牙を剥いてアエリアを噛み殺さんと襲いかかってきた




アエリアは掌握してからも厄介事は湧いてでるものだと知った


王国下にある追い詰められた貴族共が、元王族を旗頭に反乱を起こしたのだから


他の国の介入を許さないためにも、貴族達に大義名分を与えてはならない


そこでアリエッタらは利用されない様に元王族の保護に乗り出していたのだ


「……あとは第一王子だけですが、おそらくダルチ卿の元にいるのではと」


「くそ、であるならもう…」


「自由意志のない人形とされているだろうな」


第一王子は魔法による洗脳。それに抵抗できるような精神は持ち合わせて居ないだろう




ガオンッ!




大きな音が、ジリジリと揺れる天井と共に響いた

ダルチ卿に見つかったらしい


彼は、ダルチ卿は大規模攻撃を好んで使う


「まさか!ここは街中だぞ!?」


「アリエッタ、もう貴族共に期待するのは辞めようぜ?アイツら、人を人と思ってないんだ。人をゴミかなんかと勘違いしているんだ…」


「そうだな……アシュトー、カーネリア!行くぞ!」


アリエッタ達が街中に潜むのならば、その街ごと焼き払う


敵はそんな腐った貴族達だった



これより始まるのは25年もの間の戦火


アリエッタの大陸統一である







「アエリア様!起きてください、アエリア様!」


ゆさゆさと体を揺らされて起きる


「止してくれよ、アシュトー、私は起きている」


「アシュトー?寝ぼけてます?私はマリアですよ」


不安そうに覗き込むマリアの顔がそこにはあった

どうやらアエリアは寝ていたらしい


うん、と体を伸ばす

節々が固まって痛い


「ああ、悪い。本当に寝ぼけていたようだ」


随分と夢見が悪かったなとアエリアは思う

あの頃の思い出、と言っても随分と大昔の事だが

額の髪の毛をかきあげると、少しばかり汗もかいていたようだ


あそこの街の地下は、暑かったからな


そう感傷に浸る



馬車は既に停められており、王都に着いているようだ

気を使って着くまで寝かせてくれていたらしい



「まさかアエリア様がこんなにも良くお休みになるとは、信じられませんでしたよ?起きないなら殺気を当てようかと思っていました」


「うん、それは止めて正解だったな。斬り殺していたかもしれんよ」


ひい、とマリアは顔色を変える


「まあ、いいじゃないか。斬られなかったのだから」


「はぁ、アエリア様だと冗談にならないんですよ」


アエリアの技量を考えればそれは間違いなくマリアの命に届くだろう事を想像すると震えが来るのだ



王都にあるシャル家の屋敷も、離の屋敷が霞むほどには大きな屋敷だった

大きな門を通ってからも馬車はしばらく走っていたからだ。王都の中だと言うのにこの広い庭は凄いなと思う



公爵家ともなればこれ程の資産を持っているのだなとアエリアは感心した


馬車から降りた後はやはり疲れていた為に、その日もゆっくりと休む事にした




翌日ー




メアリはこちらに友人がいるとの事だったので出かける事を許可した。マリアはマリアで、昨夜は王都にあるトライエルドが持つ屋敷に泊まっているとの事だった



アエリアには別のメイドが付いているとはいえ、こちらは初対面の事もあり気安くない


お茶を入れてもらえばメイドはすすすと部屋の隅へと引っ込んでしまう。よく出来ているといえばそうなのだが、アエリアには何時もメアリが話し相手であったので少し寂しい


先程少し話しかけてみた所、興味のない色の事とか、あの観劇がどうとか言われてしまいついていけなかった


王都の屋敷ではアエリアには不必要と言うか、もう迷惑としか言いようのない事が始まっていた


その服装である

アエリアは普段、こちらに来るまでそうだが動きやすい服装をしていた。ほぼ男装である

それがこちらではきらびやかなドレスを着させられた

なるべく地味なものをと懇願してもそれなりに生地もよく、明るい色のドレスを用意される


さらには宝石類をこれでもかとあしらったアクセサリーまでじゃらりと付けられた


ぶっちゃけ重い


髪型もなんだかいつもと違い、まさにお嬢様といった雰囲気に仕上げられてしまう


大きな姿見をみて戸惑うアエリア


「く、これは何だ…何故私がこんな」


「お美しくございます、アエリア様」


メイドからやり切ったと言わんばかりの笑顔を向けられる

ここにメアリが居たらどんな顔をするだろうか?

きっと可哀想な目をするか、大笑いするかのどちらかだなとアエリアは思った



ああ……土の匂いが恋しいぞ……



思い出すのは鍬を握りしめて耕していた我が家の畑だった



着飾った後、執事のトルネから衝撃の本日の予定が、スケジュールが伝えられる


「アエリア様、本日のご予定ですがアシュフォード卿がお越しになられます。午後からは複数の予約が入ったため、急遽お茶会とさせて頂いております」



「!?」



「夜はエミーシュ様も合流されまして、再びアシュフォードの方々と夕食をとなっております」



アシュフォード家、それはアエリアの母の実家だ

アエリアから見れば祖父や祖母となる

王都に来たとなれば合うこともあるかもしれないと思っていたが…まさかこんなに早く会おうとは


しかし午後の複数の貴族からの面会とは意味がわからんぞ?私は社交界にも出ていないからのんびりしていられたのに……急にこれはどういうことなんだ


わけも分からず居たが、その答えはすぐにやってきた



「どうだい?贈り物は気に入ってくれたか?アエリア。午後からは私が選んだお前の婿候補が来ると思うが、気に入らなければ断ってくれていいんだぞ」


そこには満面の笑みで笑う、アシュフォード家の現当主、シグルドが座っていた。

その横にはシャル家の引退した当主のアインも座っている


2人とも、髪の白さを除けば歳の割にはかなり若く見える


「シグ、アエリアにはまだ早いと言ったろう?ようやく離れから出てきたばかりなんだぞ?」


先程会うなり号泣した祖父アインが言った


「アインそうは言うがな、エミーシュには既に婚約者がおるのだ、姉のアエリアがまだ婚約者もおらぬというのは対外的にもマズイとあれ程言ったろう?」


同じく会うなり号泣した祖父シグルド


先程の号泣は何だったのかと言うほど二人はケロリとして談笑している


午後からはお茶会はこの二人の老獪そうなジジイの策略であったと言う事




流石に出会い頭で泣かれてしまえばアエリアとて申し訳なさが勝る

そこにこの話だ、完全にしてやられたと悔しさよりも完敗した清々しさがある




まあ、しかしながらだ

アエリアは婚約者とか、好い人とかそんな事には興味などはない


午後からの茶会がいかなるものかは知らないが、適当に祖父らの顔を潰さない様に切り抜ける方法を考えるのであった

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