第2話 燃えあがる愛しさ


「はあはあ…やっとついた…大丈夫?」


僕は家のドアあをあけ、びしょ濡れの体をとりあえず拭くためタオルを取りに行った。


「とにかく入って…これで拭いてて…。」


僕は脱衣所と風呂場をさっと整えてから、彼女を脱衣所に誘った。


「シャワーだけど先使って…。それと濡れた服は洗濯機に入れといて…。」


「でも…あなたが先に…。」


「僕はいいんだよ…あとで!きみのほうが早くから濡れてたんだし風邪ひくぞ…それに…。」


僕はずぶ濡れの彼女の全身を上から下までなにげに見渡してしまった…。


「えっ!なに?」


僕ははっと気づき視線を横にずらした。


「透けてんだよ…下着…。」


彼女は自分の姿をみて…はっと気づいたようで…


「おじゃまします…」


といって急いで脱衣所に駆け込んでいった!


「はぁ…焦った…危うく抱きしめてしまうとこだった…しっかりしろ!俺…」


僕は出てこようとする欲情の本能を濡れたからだを拭くことで必死に抑えようとした。



あっ…そういえば彼女の服びしょ濡れで着れないよな…女ものなんかないし…とりあえず僕の小さめのトレーナーで我慢してもらうか…あと…下は…僕の部屋着の短パンで…。


とにかくその着替えをもってそっと、脱衣所へ…申し訳ないけど…


浴室の彼女へそっと話しかける…もちろん後ろむいたうえでだ…。


「なあ…。」


「えっ!!な、なに?」彼女があわてた口調で聞き返す…。


「急にごめん…とりあえずの着替え…ここ置いとくな…。」


「う、うん…ありがとう…。」


「それと洗濯と乾燥まわしとくから…。」


「ごめん…ありがとう…。」


なにげない会話にこんなに緊張するとは…おそらく彼女のほうもだろう…。


と思いながらも…とりあえず僕もびしょ濡れの服から部屋着に着替えたのだった。



そうこうしているうちに彼女がシャワーからあがってくる…。


ドアをあけた彼女の姿に…僕はしばらくの間…見とれていたのだった…。


僕にとっては小さめのトレーナーが…彼女にとっては大きめのワンピース風になっており、僕の青のチェックの短パンがそのトレーナーの下から少しのぞいているのがなんともかわいいチェックのフリルのスカートをはいているようで…可愛いかった!


「先に入っちゃって…ごめんね…服もありがとう…変じゃない?」


少し申し訳なさそうにいう彼女もまた…可愛い…。


「い、いや…なんとか着れて…よかった!そこのソファー座ってくつろいで…。ココアでいい?」


といい、僕はちょっと動揺しながらも彼女へあったかいココアを入れて彼女へさしだした。


「ありがとう!」


と満面の笑顔で俺に笑いかけてくれた…。


俺の心は満たされっぱなしのまま…とりあえずシャワーで雨もさわぐ心も洗い流していった…。



僕がシャワーから出ると彼女は少し落ち着いたみたいで、ココアを飲みながら僕の部屋にちらちら…と視線をやっている。


「本棚に私が好きな本がたくさんあるのは気のせい…?」


「えっ!それは…」


僕は言葉につまった…。


以前…彼女が好きなものを調べて買いそろえたためだ…。ひかれるよな…。


「まあ…いいけど!」と彼女は笑った!



僕も同じココアを飲みながら彼女の斜め横に座った…。


「今日は災難だったよな…。」


「うん…でも誘ってくれたから助かっちゃった!まさか…とは思ったけどね!」


「まさかって…そんなこともありって…思ってたってこと?」


彼女はちょっとはにかんだ様子で…


「だって…いつも気にかけてくれてたでしょ?私のこと…。」


「あ…まあ…そうだよな…あんなに露骨にアタックばかりされてたら嫌でもわかるよな…。」


脈なし…あきらめの気持ちだった僕は…逆にみじめな気持ちだった…。



しばらく沈黙がつづいた…。



その沈黙を破り…彼女が言った…。



「もう…アタックしてくれないの?私に…。」


僕は彼女を見た…。


彼女の真剣なまなざしがそこにはあった…。


「なんで?僕のこと…なんとも思ってないんじゃ…だから…今日であきらめようって決めてたんだ…。」


彼女は少し困惑ぎみで…


「私も始めはよくわからなかったの…でもだんだんいつもあなたのことを考えるようになってて…会社で何度も話しかけようと思ったんだけど…勇気がでなくて…。」


「じゃあ…僕…君のことあきらめなくていいってこと?」


彼女が微笑みながら…


「うん…」と小さな声でうなずいた…。


「まじ!!やったあああ!!」といい…僕はなんと彼女のことを抱きしめていた!


僕ははっと気づき…すぐ離れたがもう遅い…。


彼女はかなり驚いていた様子で下を向いて顔を真っ赤にしている…。


「ご、ごめん…ついうれしくて…」


「うん…平気…私もうれしい…」


「えっ!あ…じゃあ…手…握っていい?」


僕は彼女に触れたいと思う自分の衝動と格闘していた…。何言ってる!こらこら!


彼女はゆっくりうなずく…。


僕は彼女の両手をとり強くにぎった…。



「抱きしめて…キス…したい…。」


また彼女は躊躇もせずにゆっくりうなずく…。



これって…まさか最後までOKってこと?



僕は彼女をそっと抱きしめた…そしてそのまま耳元で…ささやいた…。


「今夜…ここに泊まれよ…。」


彼女が静かにうなずく…。ぼくは彼女にそっとキスをした…。


彼女を抱きたい…僕のものにしたい…めちゃくちゃにしたい…これが1男子がいつも考えてること…でも…リアルだと女の子は…ひくか…。


その時彼女が…


「ベット…いこ…」


僕の理性はぶっとびそうになってはいたが…そこはなんとか抑えた…。


彼女はゆっくりベットに横になり…僕は覆いかぶさる形になった…。


「ほんとに抱くよ…後悔しない?わっ!」


突然…彼女から腕を僕の首にまわしてきて…強くキスされた…。


僕は意外に積極的な彼女に戸惑いはしたが…彼女の本心がわかり正直ほっとした…。


もう…僕に迷いはない…。


「きみがずっと前から好きだった…。」


「私もやっと…あなたに好きだといえた…。」


「これからはずっと…一緒だ…。」


「うん…」


まだ雨が降っている雨音の中…僕たちは唇を重ね…そして…体を重ねた…。


まだ温まりきっていなく…少し冷たさの残る彼女の体を…自分の体温で包み込むように…彼女のすべてを愛した…。


彼女もそれに答えるかのように…僕に体をゆだねる…。



彼女を愛したのち…彼女の体温は僕より高くなっていることに…僕は安堵と嬉しさを感じずにはいられなかった…


彼女の表情もまた安堵に満ちた表情だった…


おそらく僕と同じ気持ちなのだろう…



この燃えあがる愛しさは…この一晩ずっと…消えることがなかったのはいうまでもないだろう…。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あきらめかけた恋心 【続】 水天使かくと @sabosuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ