夢と違う

最近、嫌な夢ばかり見る。

しかもその夢は、一生終わらない。


夢の内容は、残業終わりの帰り道、後ろから"誰か"に付けられているというのだ。

ただそれだけの夢なのだが、今日見た夢は何かと違った。


深夜2時を過ぎた辺り、私は電灯が少ない夜道を歩いていた。

そしていつも通り後ろから"誰か"に付けられている。

「ハァ……またこの夢か」

三日三晩同じ夢を見ていたから流石に呆れた。

そう思っていると、後ろの"誰か"が突如として走り出した。

"誰か"の手には包丁が握られていた。

殺される……!

危険を感じた私は、一目散に逃げる。

しかし、"誰か"の足はとても速く、追いつかれそうになる。

「ハァ……ハァ……ハァ……」

息が保たない。

そして私の足は限界を迎え、遂には走りを止めてしまった。

「もう……ダメ……」

私は"誰か"に追いつかれ、"誰か"が握る包丁で刺される。


刺された衝撃で私は目覚めた。

「怖い夢だった……」

トラウマになるレベルの悪夢を見てしまった私は、今日の占いを確認する。

「今日はやぎ座が一位なのか。しかもおとめ座が最下位……」

おとめ座の私にとって今日一日最悪の日になるだろう。

そして案の定、深夜1時を超えても残業させられる羽目になった。

「占い通りになっちゃった……」

そう呟きながら残業を終わらせた。

「早く帰ってゆっくり寝よう」

少し早歩きしながら家路に着いていると、後ろから"誰か"の気配を感じた。

これは……夢と一緒だ!

その気配は、夢と全く同じでシチュエーションも同じだ。

このままでは、包丁で刺されてしまう。

そう勘付いた私は、"誰か"が走り出す前に一目散に逃げる。

少し遅れた"誰か"も気付いて走り出す。

夢と同じならば、"誰か"の足はとても速く、すぐ追いつかれる。

だったら……夢と違う行動をすれば……!

そう思い、曲がり角を使ってすぐ近くの公園の遊具に身を潜める。

"誰か"の姿が見えてきた。

夢と全く同じで、"誰か"の手には包丁が握られていた。

やっぱり……!

このままやり過ごせばイケる……!

そう覚悟した時、"誰か"が呟いた。


「チッ夢と違うじゃねぇか」

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