「日常」に潜む恐怖

エレベーター

「ここのスーパー、潰れるんだな」

『まぁ、結構ボロボロだしな』

俺は、健太と電話しながら、もうすぐ潰れるスーパーに来ていた。

昔からあったスーパーなので、店内はかなり寂れている。

閉店セールをやっているので、客はかなり居た。

「健太も来れば良かったのに」

『外、出たくないしな~』

「引きこもりか!」

なんて、いつものテンションで会話をしながら買い物をしていた。


数時間後。

「こんなものかな」

『お、買い物済ませたのか』

「買いたいものは全部買ったし、そろそろ帰るわ」

『了解』

俺は、出口へと向かう。


ん?

こんな所にエレベーターあったっけ?

出口付近に見知らぬエレベーターを発見した。

そんな時、健太は音ゲーをしていた。

雰囲気壊れるな……。

そう思いながらエレベーターのボタンを押す。

見覚えないな……。

でも、ちゃんとここにあるしな……。

俺が、知らないだけなのかもしれねぇ。


チーン

エレベーターが到着した。

俺は、訝しみながら、エレベーターに乗る。

ガタンッ!

不審な動きをするエレベーター。

大丈夫かな……。

俺は、健太に話す事に。

「健太。ここにエレベーターあったっけ?」

健太は、音ゲーをしながら返答する。

『ん? エレベーター? 何言ってんだよ。無いに決まってる』

「だよなぁ」

『昔ながらのスーパーだから、階段しか無いぜ。急にどした?』

やっぱりな……。

エレベーターがある筈がない……。


『ん? その音、エレベーターか?』

健太が、音ゲーを止めてエレベーターの音に気付いた。

「うん。出口付近に見知らぬエレベーターがあったから、好奇心で乗っちゃったんだよな」

そう言うと、健太は声色を変えて

『このエレベーターは、危険だ! 今すぐ降りろ!!』

と、力強く言った。


ガコンッ!

その声と共に、エレベーターが急停止した。

「え? エレベーターが止まったんだが……」

戸惑っている俺に向かって

『どこかに非常用ボタンは無いのか?』

健太が焦ったように言う。

「どこにも無いんだが……」

普通、エレベーターには非常用ボタン付いてるのに……。

『クソッ!』

ドンッ!

健太の電話口から机らしきものを叩く音が聞こえてくる。

「健太、何か知ってるだろ……。教えてくれよ……」


…………。

無言だ。


「健太っ!」

俺は、健太に向かって叫ぶ。

すると……


「うわっ! エレベーターが、落ちていく!」

凄いスピードで、急降下するエレベーター。

無言状態だった健太は、突然言う。

『落ち着いて聞いてくれ。たける

「こんな状況で、落ち着いてなれねぇよ!」

『いいからっ!』

「健太……」

『よし、床の中央で仰向けになれ』

「わ、分かった」

健太の言われた通り、俺は床の中央で仰向けになる。

「したぞ」

『そのままキープしてくれ』

「分かった」


「止まってくれよ……」

俺は、仰向け状態のままキープしていた。

こんなの……絶対おかしい……。

早くここから……逃げたい……!

そう思った瞬間。


ドンッ!

「ウッ!」

体に強い衝撃を受ける。

『おい、健! 大丈夫か!? 健!!』

健太は俺に向かって叫ぶ。

俺は、返事をしようとしても言葉が出ない。

「けん……た……す……け……」

俺は、声を振り絞る。

こんな事なら、好奇心で乗らなければ良かった…。

俺は、物凄く後悔した。

え……?

何だこれ……。

俺の手が真っ赤に染まっていた。

っ!!

エレベーター内に俺の血が満たされていく。

エレベーターって、安全装置付いて……ないのかよ……。

バタン

俺は力尽き、やがて気を失った。


『おい! 健! 大丈夫か!? 健!!』

健太の叫び声だけが響き渡る。





チーン

急降下していたエレベーターは、やがてどこかの場所に停止した。

エレベーターのドアが開き、充満していた健の血が外に溢れ、外にある謎の物と合わさる。

それは、大量に転がっている血だらけの死体だった。

健のスマホからは、健太の叫び声が聞こえ、今でも響き渡っていた。

そして一言だけ彼は呟く。

『そのエレベーターは、

健太は、何かを知っているのだろう。


見知らぬエレベーターには、恐怖と危険が隣り合わせなので好奇心で乗らないようにしよう。

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