「人間」の恐怖

騒音

「疲れた……」

只今の時刻・23時。

今日も残業で遅くなった。

当然、みんなが寝静まっている中、俺はアパートの階段を疲れながら上る。

カンカンという甲高い音を響かせながら自室に着いた俺は、早速服を着替えた。

「カップラーメンでいいか」

いつもの手順で、カップラーメンを食べ始める。

ちゅるり。

「毎日カップラーメンだと流石に飽きるな」

味変しようにも食材がカップラーメンしかないので、できない。

「買い物行きたいけどな」

それでも俺は、カップラーメンの麺を食べ、汁を啜る。

「ご馳走様でした」

食べ終わったカップラーメンの容器をキッチンに置き、そのままにした。

「カップラーメンの容器、溜まってるな」

そろそろ捨てた方がいいな。

そして、俺は風呂も入らずバタンと倒れ込む。

疲れているせいか、俺はすぐに寝てしまった。


~~♪


隣の部屋から騒音が聞こえてくる。

なんだ……。

かなりの大音量なので、ダイレクトに伝わってくる。

こんな時間に何してるんだ。

しかもここ、壁が薄いんだぞ。

眠れねぇじゃねぇか。

注意するか。

俺は立ち上がり、注意しに隣人の部屋を訪れる。


ピンポーン

「すみませーん」


ガチャ

「何スか?」

中から、チャラそうな男性が出てきた。


「音がうるさいんだ。静かにしてくれないか」

怒らないよう、出来るだけ優しく注意する。


「あぁ~そんなにうるさかったっスか? それは、スマン」

何なんだこいつは……!

年上だぞ!

おっと、怒ってはいけない。


「分かればいいんだ。もうするなよ」

「はいはい」

態度ってもんを知らない奴だな!

そして、チャラ男はドアを閉じた。


「全く最近の若者は……」

これでぐっすり寝れるな。

隣の部屋からは騒音が聞こえなくなった。


翌日もまた残業で帰る時間が遅くなった。

「疲れた……」

腹が減っていないので、着いて早々、バタンと倒れ込み、寝てしまった。


~~♪


昨日と同様、隣の部屋から騒音が聞こえてくる。

「またか……」

昨日、注意したのにな。

全く……。

嫌々俺は、注意しに隣人の部屋を訪れる。


ピンポーン

「すみませーん」


…………。


返事が来ない。


「あのー」

もう一度インターホンを鳴らす。

しかし、返事が来ない。

寝ているのか?

そう思った俺は、ドアノブに手をかける。

すると


ギィ……。


ドアが開いた。

ったく、不用心だな。

「昨日、注意した者なんだが─」

と、大声で言ったら


「嘘……だろ……」

大音量で音楽が部屋中に響く中、男性は、首を吊って死んでいた。


ドアが開いている。

窓も開いている。

これは、自殺ではない。

他殺だ。


そう感じた俺は、すぐ警察に通報をした。

駆け付けてきた警察に、事情聴取や取り締まりを受けた。

警察からの情報によると、死亡した男性は浮気性で、突然元カノが部屋に訪れ、喧嘩が勃発。

その喧嘩がエスカレートして、元カノが男性を殺してしまった。

殺ってしまったと焦った元カノが、首吊り自殺に見せかけた。

男性を殺した彼女は、すぐさま逮捕された。


騒音のお陰で事件に気付いた。

良かったなと思う。

でも、俺は騒音が嫌いだ。


だって今でも隣から騒音が聞こえてくるからだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る