第3話
コンコンと天井からのノック音。
「ご主人様、そろそろ休憩したらいかがしら? 旅は長いわ」
旅ではなくて正式には逃げているんですよ。
「あれは街か町なのでは?」
地図を思い出してみればここから街や町が各所にある。表記が違うのは人口とガジノがあるかないかで呼ばれ方が区別されている。カジノの遊戯施設があるのはそれだけ裕福な人々が多くその裕福層は英雄の一族の場合が大半だった。ここからもう一つある砦の検問を超えると王都及び居住区となる。砦の向こうは大きな都があると考えると解りやすい。
いま煌々と夜を照らす建物が見えてきた。ジェットの街。都以外ではガジノが一番栄えていたと記憶している。街も魔物や不審者が容易に入れないよう鉄の囲がされており、外周から中が見えないように遮断されてるわけではなく網目に交差され眺められはする。囲は外側に反るように建てられていて登って入れないよう返しがあった。
通行許可書があれば門扉から正式に街へ入れるのだけれど、最新の許可書がどんな物すら知らない俺たちが持ってるはずがなかった。
「ご主人様。そのまま直進してくれるかしら? 兵士がいるなら街へ入れるわ」
逆じゃないですか?
良い案が思い浮かばずが自動車を直進させる。砦の検問所と同じく夜間門扉は開かれていない。云われた通り進んでいくと二人の兵士にもちろん気づかれた。
「ここで止まってくれるかしら?」
ホクトに従うだけの木偶の坊は素直に停車させた。停車した物体を異変と感じた兵士は駆け足でやってくる。気もそぞろな俺に対してホクトは不敵な笑みを浮かべていると余裕を持った声色で理解できた。
「こんばんは。おはようかしら? いつもご苦労様ね」
自分たちを労う声に兵士は声を出すのを少しためらった。
「貴方たちがいてくれるから街中はあんなにも賑やかでいられるの。それは皆々解ってるいるから手前のようにいつも声をかけてくれるでしょう? なんだか驚いた表情ね。心当たりでもあったのかしら? 貴方たちがいなくなったら門扉は開かなくなるとは考えていないのね。ここの門扉は勝手に開かないのに当然に開くものだと思って、感謝しないのはどうなのかしら?」
警戒心を抱いていた兵士の固い表情が崩れていくのが見て取れた。ホクトの一方的な喋りは思考を鈍らせ冷静さを失わせている。
「大丈夫。手前は二人がやってくれているのを知っているわ。我慢ばかりしないで発散させる練習をして自身を褒めてあげなくてはね。それで手前たちはジェットに入りたいのだけど、門扉を開けてもらってもいいかしら? あと自動車を隠したいわ。昼まで誰にも見つからない場所はない?」
兵士の一人はとろりと弛緩した表情で門扉のところへ戻っていく。一人は街に入って右折した場所を指していた。そこは預り所らしく馬車や二輪自動車などが置かれていると兵士は教えてくれた。
「ありがとう。助かるわ。ご主人様行きましょう。門扉も開いてきたことだし宿屋でゆっくりと休んでちょうだい。ああ、貴方もありがとう」
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