第26話

サンディエゴへはバスを何台か貸し切って 行った。そして、千鶴子がアンジェリンの 横に座った。              居達さんはそれを見て嫌な顔をしていた。                  ホテルでの部屋は、二人の生徒が一つの部屋に泊まった。              アンジェリンのその日のルームメイトは、 同じドミトリーの他の部屋に住む、彼女や 千鶴子と同い年で、高校を出てから一年間 働いていた、割と大人っぽい女の子だった。アンジェリンの事も、特に好きでも嫌いでもなさそうだった。            こうして考えると、居達さんは結構上手く 人選をしていたかもしれない。      サンディエゴでは最初に皆で観光をしてからホテルに着き、部屋決めを聞いてから荷物を部屋に置き、いよいよ自由行動になったのだが、アンジェリンは凄く不安だった。   それは、千鶴子が自分の同じクラスの仲良し三人組と一緒にいようと言っていたからだ。                  勿論そうでなければ、彼女は誰も行動を共にする人間はいなかった。彼女はKBSで友達はいなかったからだ。           同じクラスの人間とは口を聞いたりしたが、ドリーが最初に友達になって一緒に行動していた時以外は、殆どの生徒がアンジェリンと一緒にいたがらなかった。        皆はアンジェリンを別物だと、意識的にでも無意識的にも認識していたので、彼女を相手にする人間は一部だった。        だから千鶴子がアンジェリンを自分のクラスの仲間の側に連れて行くと、皆は凄く嫌な顔をあからさまにしたり、驚いたりした。  「みんなー?アンジェリンも一緒に行動するよ〜。」                「エッ?何で?!」         「嘘?!」              「どうして〜??」           「だって私の隣の部屋なんだよ?それにアンジェリンは英語か話せるんだから!だから 私達だって一緒にいたら助かるんだから!」皆、不服そうだった。特に一人、アンジェ リンの様な背が高い女の子が、憎らしそうに彼女を睨んだ。             以前にアンジェリンが、近くにいた彼女に 話しかけた時にこう言った子だ。     「一寸、私に話しかけないでよ?!私はあんたなんかと友達には絶対にならないからね!あんたなんか大嫌いだから!!あんたなんて、英語だから一番上のクラスだし、凄く できるんだろうけど?!でもそれが他の科目だったら、私の方があんたなんかよりもできるからね。あんたなんかに絶対に負けないから!!」                アンジェリンが驚いて悲しい顔をすると、 嬉しそうにしてから走り去った。     この気が強い娘、埼玉県出身の知央里と  言う、変わった名前の子が千鶴子を引っ張って行った。               「ねー、何でなの?!私はあんなのと、あんな外人なんかと一緒に行動なんかしたくないよ!みんなだってそうだよ。」       何故外国に英語の勉強をしに来ているのに、その国の血が混じっている人間を、外人だと言って嫌がったりするのだろう?     それは一つには、こうした学校に入って外国ヘ来ている連中の大半は、英語を勉強すると言うのは口実で、基本唯遊びに来ているのだ。                  海外ヘ遊びに行って、色々と変わった事を したい。そこで遊んだり観光したり、その 土地の食べ物を食べたり飲んだりと、少し 変わった空気を吸いたい、味わいたいと言う事が目的なのだ。            だからそうした事を思うし、平気で言う。 そして知央里に付いては、彼女と付き合った青年からも後から聞いた。アンジェリンより一つ年下の彼は言った。         あいつは自分が凄く可愛いと思っていた。 確かに日本では可愛い方だと。      そして高校の時には、英語以外では成績は 割と良かったらしい。だからこっちヘ来て 自分の苦手な英語がずば抜けてできるアン ジェリンが、ハーフだからできたとしても おかしくはないのに、それが感に触った。又、それなら顔が自分よりも劣っていたら まだそんなに腹は立たなかった。だが顔も 自分の方がかなり下だ。         こうした2つの事柄で、女の嫉妬心に火が 付いた。                だからあいつを許してやってれ、とアン ジェリンに謝った。            顔は余り良くないが頭が良くて、親が外交官をしているという東京出身の秋川がそうして何度か謝った。             だからアンジェリンは分かったと言った。 だが、たとえそうだとしても我がままで思いやりがないし、大して可愛くもないのに何故中身がまともな男がそうして着くのだろう?そうして不思議に思った。        千鶴子が知央里に、アンジェリンと一緒なら英語が分からなくても何とかなるし、全部 アンジェリンに、食事でも何でも頼ませれば、何でも分からなければアンジェリンに 聞かせたら良いのだからと説得している  のが、少し離れたアンジェリンに聞こえた。                  すると知央理は仕方無くやっと納得した。 そうして、アンジェリンは彼女達と行動を共にして、レストランに入り食事をした。  千鶴子が中心になって話し、彼女の友達が 会話をする。時たまアンジェリンにも話を 振って、彼女も返事をする。       すると一人がアンジェリンに質問をした。 それは感じの良い話し方だった。千鶴子を 含む他の三人が驚いてこの修子を見た。  アンジェリンも驚いたが、直ぐに普通に返事をした。                修子はアンジェリンを敬遠していたが、共に行動して、千鶴子が話を引き出してそれに 答えるアンジェリンが、別にそんなに変わってもいないし自分達と変わらないと思った。そして嫌じゃないと感じた。       むしろ英語が分かるのだから、ならその英語を聞いて教えてもらいたいと思った。それをアンジェリンに聞いた。         アンジェリンがかまわないと答えると、千鶴子が手を叩いた。            「そうだよ、修子!教えてもらいなよ〜?」知央里ともう一人、鯉子が嫌な顔をした。 特に知央里がだ。だが修子はそんな二人の事を気にしなかった。           食事を終えてからはサンディエゴの繁華街で、映画館へ行こうと言う事になった。彼女達は映画館へ行った。          此処で、千鶴子はとんでもない変な事を  する…。

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