第5話

「何、話って?」            「ねー、アンジェリン。実はね。」     千鶴子が言い出した。          「芝やんの事なんだけど。」        弘子が後を続けた。           「芝やんの?!」            アンジェリンは嫌な予感がした。余り良い話じゃないな。そう思った。        「実はさ…。」              アンジェリンはそれを聞いてとても不快に なったし、悲しかった。         「ねっ?だからそうしてよ?」      弘子が力強く言う。           「そうだよ、アンジェリン。その方がアン ジェリンには良いよー。」         千鶴子も説得する。           「でも…勝手にそんな事をして、居達さんが怒らないかなぁ?」           アンジェリンが落ち込みながら言う。   「大丈夫!!それは私達が上手く言うから!!」                「そうだよ。だからアンジェリンは何も心配しなくても、平気だからね〜?」     「本当に良いのかな、そんな事?」    「大丈夫だから!アンジェリンはいちいち 心配しないの!!」           「大丈夫だよ〜、アンジェリン。」    「じゃあ良いよ…。分かったよ。」    「良かった〜!!それがアンジェリンの為には一番だし、芝やんも喜ぶよ!」     弘子が凄く嬉しそうに言った。      「そうだよ!それでいいんだよ、アンジェ リン?」                千鶴子も嬉しそうだ。          アンジェリンは一体何を言われたのか?  話はこうだ。芝やんはアンジェリンと同室になってから、彼女がとても子どもっぽいから凄く疲れて嫌だった。ストレスが溜まった。だから頻繁に酒を飲む様になった。そして 悪酔いしたりして、この間の出来事もアンジェリンにイライラしていた気持が積もっての事からあんな風に頭を殴る事をしてしまった。だからこのままずっと同じ部屋だと、又同じ様な事をしてしまうかもしれない。そうしたら自分も困るし、アンジェリンも自分のせいで怪我でもしたら大変だ。      だから思い余って自分達に相談をしてきた そうだ。どちらかとアンジェリンが同室になってほしい、彼女には部屋を替えほしいと。それで弘子が立候補して、自分がアンジェリンとルームメイトになると言ったのだと。 だからアンジェリンは荷物を全て隣の部屋に移動して、千鶴子がアンジェリンの部屋に 移ると。                アンジェリンは信じられなかった。まさか そんな風に思われていただなんて!自分は 殆ど芝やんとは口をきいていない。年上の 彼女に何を話していいか分からないし、邪魔をしたら悪いと思っていつも自分からは殆ど話しかけなかった。           なのに一体自分の何を見て子供っぽいと  思ったのだろう?!しかもそうしてストレスが溜まって酒を年中飲む程嫌だったなんて?! 正直、信用できなかった。    最初は本人に確認したい、それから部屋替えをどうするか決めたいと二人に言った。だが芝やんがいないのは、早く出たのは、そうした事をされるのが嫌だからだと何度も千鶴子と弘子に言われた。           だが、アンジェリンは感が働く所があった。だから結局は部屋替えをしたが、これが全て嘘だったともっと後になってから知る事に なる。                 彼女に非は一切無かった。これは全て作り話だったのだ!!             そしてそれは、さも得意そうに弘子の口から聞く事になるのだ…。

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