第4話

「ウワァ、芝やん?!何してるの?!」、「一寸止めなってばー!!」         二人がそう叫びながら芝やんの腕を左右から抑えると無理矢理に引っばった。だが芝やんはそれでもアンジェリンから離れようとしないで暴れている。            アンジェリンは芝やんに本気でボコボコと執拗に殴られて、もう泣きながら必死になって頭を両手で抑えていた。         だが芝やんは二人が来るまで絶対に止めず、アンジェリンも声を出していた。     「止めてよ〜?!助けて〜!!止めてったら〜!!」                もしかしたら芝やんは酒に酔っていたのもあるが、面白いからそんな事をしていたの かもしれない。四人の中では一番年上だし、もう成人のクセに。最低だ。        千鶴子と弘子が幾ら腕を掴んでもその腕を バタバタと振り回してアンジェリンから中々離せないし、外へも連れ出せない。    仕方無く千鶴子が叫んだ。        「もう、誰か男を呼んで来るよ!!」   「分った!」              弘子が返事をしながら、一人でまだ芝やんの腕を一応は何とか抑えていた。      「芝やん、止めてよ!アンジェリンが可愛そうでしょう?!」            そんな風に言いながら。         だが芝やんは笑いながら相変わらずアンジェリンを可愛そうと言いながら、自由な片方の腕で頭を叩いていた。          やっと千鶴子に連れられて、一緒に酒を飲んでいた男達の二人が入って来た。     「オイ、何やってるんだよ?!」、    「おい、止めろよ!!」         二人の、やはり2十代の青年が芝やんの左右に立つと、暴れ狂う凶暴な彼女を無理やりに連れて出て行った。           「アンジェリン、大丈夫?」       二人が交互に聞いた。          弘子は笑っていなかったが、千鶴子は笑いながら聞いた。そしてこう言った。     「もう〜!!本当に芝やんの酒癖の悪さにも困るよねー?」             その日、もう芝やんは部屋に戻る事は無かった。彼女は、自分を連れ去った男の生徒達のうちの一人と既に付き合っていて、もう肉体関係があった。だからその男の部屋で同じ ベッドに寝たのだ。           そして翌朝、部屋へ戻って来た。     「アンジェリン、おはよ!」       「…おはよう。」            「ねー、昨日はごめんね〜?」      そんな風にニコニコしながら言う。    「ごめんね〜。」            「…うん。」               バスルームはいつも大概は、朝はどちら側のドアも開いて見える様にしていた。だから 芝やんが戻ると千鶴子と弘子が入って来た。「ねー、昨日の事覚えてる?」      弘子が言うと芝やんはニヤニヤしている。「もう凄ったんだよ〜?アンジェリンの頭をボコボコ殴っちゃって。」         千鶴子が笑いながら言う。        「うん、聞いたー。」           弘子: 「芝やん、あれじゃアンジェリンが可愛そうだよ。」              千鶴子: 「そうだよー?芝やんったら、もう手がつけられなかったんだから〜。」    芝やん: 「うん、カカシに聞いた。」    カカシとは芝やんとベッドインした、付き合っている男だ。顔がカカシに似ている事から誰かがつけたあだ名だ。         そしてカカシと芝やんが裸でベッドの中で抱き合っているのを、クラスから戻ったアンジェリンは一度見て大変に驚きながらも直ぐに部屋を飛び出した事がある。       その時に芝やんに後ろから声をかけられた。「アンジェリン!ねー、みんなには黙っていてよ?!」               アンジェリンが振り返ると又言った。   「いい、アンジェリン?頼むね?」    「分った。」              アンジェリンはだから誰にも言わなかった。だが、皆知っていた。そんな事は直ぐに分かり、そして彼らのその付き合いもアッと言う間に終わった。             だからこの時にはまだ二人は付き合っていて、酒を飲みながら皆で、同じ寮にいたり モーテルに住むKBSの生徒達の噂話をしていたらしい。               そしてアンジェリンの話にもなった。そして彼女がめちゃくちゃ初心で、何故あんなかと言うと、日本では混血だから物凄く虐められていた。だから親に、もっとそれ以上に危険な思いをしない様にと色々と規制されていたらしい。だからよく世間の事が分からないみたいだ、と誰かが言ったらしいのだ。   同室の芝やんは非常に酒癖が悪いから、それを聞くといきなり席を立った。そして部屋に戻って来ていきなりアンジェリンに襲い掛かったのだ。               だが飲んでいた連中はまさかそんな事をしに行っただなんて思わず、誰も気に留めなかった。又直ぐに戻って来るとでも思っていたみたいだ。                この日、芝やんは又アンジェリンに笑いながら謝って、結局それに付いては終わった。 だが次の日だ。朝、アンジェリンが大学の食堂へ行こうとした時だ。         毎日、大学生達やKBSの生徒達はキャンパス内にあるカフェテリア(食堂)へ食事をしに行く。昼食も夕食もそうだ。       だからアンジェリンが行こうとすると、千鶴子と弘子が部屋に入って来た。そして話が あると言った。             芝やんは既に部屋を出て、先に食堂へ行っていた。                 アンジェリンは不審に思った。一体何の話があるのだろう、と。           二人は真剣な眼差しでアンジェリンを見た。

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