第3話元はユリの部屋を出て公園に行く。
すでに正午は過ぎている。
「ごちそうさま」
ユリは、まだ立ち上がれない。
腰がガクガクして、甘美に過ぎる。
そのユリに声もかけずに、元はベッドからおりて、着替え始めている。
ユリは甘い声を出す。
「ねえ・・・何か作るよ、食べてって」
元は、ようやくユリを見た。
「いらない、腹が減ってない」
ユリは懸命に身体を起こす。
「大学に?」
「それとも?」
元は口を尖らす。
「知らない、自分でも決めていない」
それでも、ユリの髪をなでる。
「泊めてくれてありがとう」
ユリは、また頭も身体もクラクラとする。
できれば、元に身体を支えて欲しい。
ただ、その期待は、いつもと同じに、かなわない。
元は、そのまま、ユリのアパートから姿を消した。
ユリは、元を追いかけることはしない。
「とても動けないよ、余韻が甘すぎて」
「非番でよかった」
「元君を食べると、一日は仕事にならない」
「どうでもいい男相手は・・・無理」
元の今夜を思った。
「順番ではミサキかな、きっと狙っている」
悔しい気持ちもある。
ただ、不安もある。
「元君、毎日クラブに来るわけでないし」
「どこに行っているのか」
「公園で酔いつぶれていたこともある」
「エミが拾って、こんなことが始まった」
元は、ユリのアパートを出て、歩き出した。
「また、やっちまった」
後悔はあるが、いまさら仕方がない。
そもそも、何故女の、しかも、ほとんど毎日違う女のアパートで目覚めるのか。
「気味が悪い」と思うけれど、朝起きたら、そうなっている。
「抱きついて来るから仕方ないだろう」
「女はヘロヘロになるまで、むしゃぶりついて来る」
「だとしたら、こっちがヘロヘロにさせないと。アパートを出られない」
「三人の名前も、よく覚えていない」
どこに行くとも決めていない。
アパートで水は飲んだけれど、何も食べていない。
腹が減らないので、ただ歩くだけ。
ポケットの財布を見た。
「万札が増えている」
「マスターか、さっきの女か?」
「どうでもいいか、そんなの」
少し歩いて、公園の近くになった。
「泣き声?女の子か」
「お母さん?」
「はぐれたのか?」
元は、女の子の泣き声のする公園に入って行く。
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