大臣就任

ロフのあとを追い、王城の廊下を進む。

廊下には赤いカーペットが敷かれ、壁には至る所に絵画が飾られている。どれも高価なものだとすぐに分かる。

しばらく進むと立派な大きな扉が正面に見える。豪華な装飾がされており謁見の間がここであると示している。


「アルスくん、この部屋が謁見の間だよ。」


「そ、そうですよね。」


ロフが謁見の間であることを教えてくれる。あえて知ってますとは言わない。


「ではアルスくんはここで待っていてね。しばらくしたら入るよう中から言われるから!」


ロフが扉の前で待つように言う。


「それじゃあ私は先に中に入るね!」


「はい、わかりました...」


ロフはアルスを扉の前に残し、謁見の間に入っていった。


扉の前に残されて2分ほどたった。


「アルス・フォン・サーナス!謁見の間に入るように!」


部屋の中から声が聞こえてきた。

それと同時に謁見の間の扉が開かれ、アルスは謁見の間に足を踏み入れた。

謁見の間は天井が高くとても広い。教会に近い雰囲気だ。

中央には玉座に向かって赤いカーペットが敷かれている。

玉座には国王と思われる男性が座り、その横には紫髪の男性が立っていた。

玉座は一段高いところにあり、ロフは玉座より低い位置に立っている。

アルスは赤いカーペットを進み玉座の近くまで行くと片膝をつき頭を下げた。


「面をあげよ。」


正面から声をかけられるとアルスは顔を上げる。


「よく来てくれた。君がアルス・フォン・サーナスか。マリアナ王国国王のイーサン・ゼラ・マリアナだ。」


国王は自己紹介をしてくれた。

マリアナ王国国王イーサン・ゼラ・マリアナ。

歳は45歳。茶髪でダンディーなイケメンだ。


国王がアルスへの自己紹介を終えると隣に立つ紫髪の男性が口を開く。


「マリアナ王国の宰相を務めているダット・フォン・リータです。」


宰相も自己紹介をしてくれる。

宰相ダット・フォン・リータ。歳は45歳で国王と同い歳のイケメンだ。爵位は侯爵で王都サルサの北に接するリータ領の領主でもある。

リータ家は代々マリアナ王国の宰相を務める家系だ。領都リムは王都サルサに接しており、すぐに行き来できるようになっている。

リータ侯爵領は人口30万人で領都リムには20万人が住む。領地自体はサーナス侯爵領やノスタ公爵領ほど広くなく、サルサとリムが接していることからベッドタウンのような役割を担っている。


「今日君を呼んだのは君に打診したいことがあって呼んだんだ。」


国王がアルスに話しかける。


「打診ですか?」


「そうだ。宰相、説明してあげなさい。」


「はい、陛下。」


国王がそう言うと宰相が説明を始める。


「まずアルスくん、今回のリーベル前外務大臣の件ご苦労さまでした。」


アルスが関わっていることを宰相、国王は知っていたようだ。


「今回の件が無事解決したのは良かったのですが、実はかなり困ったことがありましてね。」


「困ったことですか?」


「はい。リーベル派は今回の件で壊滅したのですが、リーベル派には外務大臣、商務大臣が所属していたので、その席が不在となってしまいました。」


「外務大臣だけでなく、商務大臣も...」


「どちらもとても大事な役職なのですが...」


宰相も困っているようだ。アルスは今回の件の影響の大きさを知った。


「アルスくんを呼んだのはこの外務大臣と商務大臣を兼任して欲しくて今日は王城に来てもらいました。」


「私に外務大臣と商務大臣を!!!」


突然の打診にアルスは大声を出して驚く。

まさかの大臣打診に外務、商務の兼任だ。

驚かざるを得ない。


「なぜ、私なのでしょう?」


「それはノスタ財務大臣からの推薦があったからです。」


宰相は財務大臣であるロフからの推薦である事を明かした。

そしてロフが口を開く。


「アルスくんと出会って1年が過ぎ、ショッピングモールの件やリーベル前外務大臣の件など驚きの能力を見せてくれた。そして、私はアルスくんの近くにいて人となりを知った。これ以上の人材はマリアナ王国いや、この世界にいないと思っている。だから今回推薦させてもらった。力を貸してほしい。」


ロフは頭を下げた。


「ノスタ公爵...いやノスタ財務大臣頭を上げてください!」


アルスは頭を上げるようにいい、ロフはしばらくして応じてくれた。

そして国王が口を開く。


「アルスくん、財務大臣もここまでお願いしているし、私と宰相もぜひ君に承諾して欲しいと思っている。君の噂はかなり前から聞いていたしな。頼む。」


国王もアルスに打診を受けるようお願いしてくる。


「そもそも、爵位を持たない私が大臣をしても良いのでしょうか?」


「それなら心配ない。君には伯爵位を与える。まぁ、君は次期サーナス侯爵だから正式に侯爵になるまでの間の措置だと思ってくれ。」


「そうですか...ですが、」


「もし大臣在任中に結果を残せば爵位を上げてもいい!!」


国王もどうやら本気でアルスに大臣になって欲しいようだ。


「大臣になればかなりの権限を有することができる。君が成し遂げたい事も出来るかもしれないぞ。」


「成し遂げたい事ですか。」


アルスは考えた。


(僕の成し遂げたい事か...この世界を豊かにすること...それが僕の使命だ。その近道になるのかもしれない...)


外務大臣に商務大臣。2つの役職にアルスは可能性を感じた。


(よし!いけるかも!)


考えていると国王がもう一度聞いてくる。


「アルスくん、受けてくれるかい?」


国王が問う。


「私なり考えました。外務大臣と商務大臣の打診を受けたいと思います。」


「おぉ、本当か!」


「アルスくんありがとう!」


国王とロフが嬉しそうにする。


「では陛下。正式に任命を。」


「あぁそうであったな。」


宰相は国王に任命するように促す。


「アルス・フォン・サーナス。そなたを伯爵と叙する。そしてマリアナ王国外務大臣、商務大臣に任命する!」


「ありがたく受けさせていただきます。」


こうして国王から正式に任命され、アルスは外務大臣兼商務大臣となった。











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