第12話 変態宇宙人は男の子の夢を見るのか

俺は横にいる悟史にドキドキしてた。


「そんなに落ち着かないなら男に戻ろうかい?」


「あ、いや、そのままでいいかな」


体を捻って覗き込んできたが恥ずかしくて思わず目をそらしてしまった。

落ち着くためにまず事実を整理しよう。

琴音さんとのお出掛けイベントが発生したから今日悟史にアドバイスを頼んだ。

そしたら放課後にオススメのデートスポットに案内してくれることになって

案内途中にいきなり


「やっぱりこっちの方が練習にはいいよね」


とか言いったかと思うと、気付いたらいきなり悟史がいきなり女の子になってたんだ。

しかも問題はそれが異様に可愛いのだ!

気づかれないようにちらりと悟史に目線を向ける。

まず俺の胸辺りまで小さくなったかと思ったら、白く透き通るミディアムの長さの髪が目につき、青く宝石のように輝く目、色白肌で引き締まった体、いったいどこの海外モデルだろう。

それが俺の最初の感想だった。


「中身は僕なんだからそんなに緊張しないでよ」


「いや、でも完璧に見た目女の子じゃん」


視線を少し落とすとそこには男にはないものがあるのがある。


「見た目が変わっただけだろう?」


「そうなんだけどさ~結局お前の性別ってどっちなんだよ?」


「う~ん、どっちもかな」

「状況によって使い分けてるんだよ、元々姿を変えてここに来てる訳だしね」


「そういえばお前宇宙人だもんな」


「でも見た目が多少変化するだけでこんなに反応が変わるなんて、やっぱり地球人は面白いよね」


「俺らからしたら性別が変わるのは多少とは言わないんだよ」


「ふーん、じゃあさ、今の僕になら良太は恋するの?」


言葉に詰まる。

腕を組んで首を捻ってみるが何とも難しい。


「分からない」


「なるほどなるほど、じゃあ僕に恋する可能性はゼロではないってことだね」


「そうなるな」


「やっぱ人間って面白いね!」


「それは何よりだ」


思わずため息をつく、まともに会話していたらこっちの身が持たない。


「所で今どこに向かってるんだ?」


「ショッピングモールだね、いろんな店が入ってるから誰と来てもそれなりに興味があるお店があるし、遊べてご飯もそのまま食べれるしここに来ればとりあえず問題ないよ」


「さすが慣れてるな」


「色んな人と関わるのが僕の仕事だからね」


腰に手を当ててピースしながら可愛くウィンクする。


「はいはい、可愛い可愛い」


何だよこの可愛さ、反則だろ!

妹や琴音さんである程度女性に免疫がついたと思っていたがそれでもなお、これはレッドカードで反則の一発退場である。

顔を見られないようにそう言いながら少し早く歩く。


「投げやりだな~、結構これ人気あるんだよ?」


そりゃそうだろうな。


「そんなに人気あるんだったら彼女も彼氏も多くて大変そうだな」


「いや?」

「僕友達は多いけど彼女も彼氏もいないよ」


「マジか」


「マジですよ、僕が君に噓をついた事ないでしょ?」


「いや、それは流石に噓だろ」


「ばれちゃったか」


てへっと軽く舌を出した。


「何かそうゆう決まりがあるのか?」


「うーん決まり…って言うか僕の勝手な願いかな?」


「願い?」


「そう願い」


やけに含みのある言い回しだな。

気になって口を開きかけたがタイミングを逃した。


「よし、じゃあデートの練習開始!」


不意に柔らかくて温かい感触が右手から伝わる。


「ちょっと悟史!」


振りほどこうとするが、しっかり左手が絡められていて振りほどけそうにないし

今大きく動くと胸にも当たってしまいそうだし!


「さて問題です」


「いきなりだな!」


「これからどこに向かって歩くのが正解でしょうか?」

「ちなみに正解したら僕からのご褒美で外れたら罰ゲームです」


「おいおい、罰ゲームって」


「そんなひどいことは事はしないから気軽に答えてみなよ」


「じゃあそうだなぁ」


考えろ俺、ゲームで鍛えた経験値をここで発揮するのだ!

ゲームを含めての女性経験となれば悟史より経験があると言っても過言ではないだろう。彼女たちと過ごした日々を思い出すのだ。

ゆっくりと大きく息を吸込み深呼吸をして深い記憶の中にもぐっていく。


そして答えは得た。


「水着売り場だ!」


「…ごめん良太くん、訳が分からないよ」


流石の人間マスターもこの答えは理解ができないようだ。


「そうか、服屋だったか…」


「それなら分からなくはないけど、そもそも何で水着が出てきたのか教えて貰っていいかい?」


「過去の俺の経験からだ」


「君って面白いねホント」


グイっと腕を引っ張られ、バランスを崩しながら歩き始める。


「罰として僕とプリクラ撮って貰いま~す」


「それが罰ゲームかよ」


とゆうかこれはご褒美なのではとゆう心の声は心の金庫にしっかりとしまっておく。


「ちなみにご褒美は何だったんだよ?」


「そっちはね、僕と手をつないで歩くだね」


どっちも当たりじゃねーか。


「でさっそくオススメデートプランになるけど」

「まずは事前に行きたい店がないか聞いておく、無い、もしくは時間を潰したくなったらショッピングモールをぶらぶらして、そして夕方にここから近くの夕日の見える公園でハッピーエンドだね」


「なるほどな」


「デートでずっと歩き周るのは良く無いし、ショッピングモールならいろんな物があるから話題にも困らないし、交通もここからならどこにでもいけるし完璧でしょ?」


「お前凄いな」


改めて悟史に頼って良かったと思う。

一人で考えていては空回りしていただろう。


「凄いでしょ、惚れた?」


いたずらっぽく聞いてくるその顔に普段なら軽口で返していたが、この場合は素直に感謝したい。


「惚れたよ、ありがとう助かった」

「お礼に何か食べたいのあったら言ってくれおごるから」


「嬉しいね、なにおごって貰おう」


「なんでもいいぞ」


二人で賑わっているショッピングモールを歩き始めた。


しばらく遊びながら歩いているメガネ屋があった。


これなんて良太くんに合うんじゃない?

そう言うとふざけたように黒いレンズのサングラスを俺に掛ける。


「あはははははは」


「おい」


結果は分かっているが一応近くにある鏡で自分の顔を見てみると予想通りの見た目だった。

冴えない顔にカッコいい黒のサングラス、全くバランスが取れていなかった。


「お返しだ」


金属フレームの丸眼鏡を悟史にかけるが、やっぱり似合っていて可愛さ1.5倍のバフ掛かり、俺の眼鏡属性には効果は抜群だった。


「なんか気に食わないな」


「流石に理不尽じゃないかな、良太くん」


そう言うと今かけてる黒い、いかついサングラスを元に戻していかにも真面目そうな黒い四角いレンズの眼鏡を俺に掛けた。


また、笑われると思って悟史を見たが何とも言えない表情をしていた。


「そ、そんなに変か?」


鏡を見て見たが、さっきのサングラスよりはまだましだと思う。


「ねえ、昔そんな感じの眼鏡掛けてなかった?」


「掛けてたよ、よく分かったな」


再び悟史に視線を戻すとまだ変な顔をしていたが、ハッとしたようにいつもの

笑みを浮かべた。


「なんかそんな感じしてね」


「そんな感じって、そんな芋っぽい顔なのか俺は」


一応オシャレを考えて高校からはコンタクトにしてみたが、だからといっていきなりモテるようになったりはしなかった。

現実世界でも装備品でもうちょっと変化が欲しいと思うのは俺だけではないはずだ。


「いや、そうゆう訳じゃなくてね、たまたま当たっただけだから気にしないでよ」


優しさが痛い。


「ほら、次行こう、ね!」


励ますようにそのまま引っ張られるようにして、また歩き始める。


今更ではあったがこの時俺は普段感情を表に出さない悟史がなぜこの時そんな顔を浮かべていたのかもう少し考えておくべきだったかもしれない。

しかしまあ、大体の物事は過ぎ去ってからでは無ければ誤りであったと気づけない物だ。














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