第11話 あなたと保健室、どんな物語がありますか?

「どれくらい寝てた?」


「30分くらいだね、気絶した良太君をあなたの妹といけ好かない宇宙が保健室まで運んで来てくれて、そのまま後は頼むって部室に帰って行ったわ」


「薄情だな、模月先輩は?」


「まだ仕事があるとかで帰ったよ」


「そっか・・・」


なんか悲しくなるなぁ。


「てゆうか、琴音さん普段からみんないる時もその口調で話してみたら?」


「まだ良太君以外の人にまだそこまで心を開きたくは無いの

あ、でも良太君の妹は別だよ!」

「くっ、あの宇宙人さえいなければ」


「前から思ってたけどなんだか悟史にだけやたらと冷たくないか?」


「だってなんかムカつくんだもん」


「いきなり精神年齢下がったね」


普段の言葉遣いと表情からは想像出来ないくらい幼い雰囲気が漂う。

ぷくっとしたほっぺにすねた口調、素の彼女がこれなのかもしれない。


「そうかな?」


「そうだよ、普段はあまり感情を喋らないじゃん」


ムカつく、その言葉の中に様々な言葉が含まれていてどの言葉を彼女が使いたいのか分からないが彼女からその言葉を聞けただけでも生きて来た価値があるかもしれない。


「確かにそうだけど、隠してるだけだよ」


「隠してる?」


「正確にいったら隠すようにしてるかな、今日もなんだか良太君にムカついたけど周りには分からないようにしたし」


必死に今日の出来事を思い出して特に思い当たる節はないが、彼女が言うくらいなのだから大罪になっても然るべき事を俺はしたのだろう。

てか彼女に面と向かってムカついたとか言われると本当に精神的にくるな、これは俺が不登校になる日もそう遠くないかもしれない。


「マジか…ちなみに俺のどんな所にムカついたか教えてくれないか?」


「う~ん、秘密」


「凄い気になるんだけど」


すると少し困ったような笑顔を俺に向けて笑った。


「女の子には秘密があった方が魅力的でしょ」


そう言われてしまっては何も言えない。

女の子のこのフレーズは絶対領域でこれ以上真意を探ることは出来なさそうだ。


「それよりも今は依頼を達成する事の方が重要ですよ」


あからさまに話題を変えられるが乗らない訳にいかないだろう。


「たしかに、俺に模月先輩の彼氏役なんて務まるかな」


さらにそれは命を狙われながらの任務である。

想像するだけでこの学校の入試の方がまだマシかもしれない。


「出来ますよ、私が保証します」

「それに未咲や宇宙人が何か考えてくれてるらしいですし」


「未来人と宇宙人に考えて貰えるとかめちゃくちゃ凄いけど、でも不安しかないなぁ」


二人はスペック的に完璧でもやはり普段の生活で何となく、ずれを感じる瞬間があるのだ。

未咲はブルーチェ二リットル事件を起こすし、悟志にはこの前ちょっとそこまで遊びに行こうと言われて軽くオッケーしたら他の惑星に連れていかれそうになった。


「私も力になりたいんですがどうしても二人みたくそこら辺の経験は少なくて」


「そう思ってくれるだけで嬉しいよ、実際俺もそんな経験ないしね」


友達に彼女はと聞かれる度に次元が一つ下だと毎回答えていた自分か悲しくてしょうがない、もちろんバレンタインもチョコレート0個はお決まりである。


「誰か好きな人とかはいなかったの?」


「お兄ちゃんとかですかね」


「君のお兄ちゃんが羨ましいよ」


最近出来た妹は俺を兄だと思っていない感じがする、まずお兄ちゃんなんて呼んでくれないし、ツンに対してデレが少ないし、メイド服も着てくれないし・・・。


反抗期だろうか。


「一応参考までにさ、デートするならどこがいいとかある?」


「そうですね、正直好きな人といられるならどこでもいいと思いますけど

欲を言えば、日中は水族館やテーマパークで楽しく遊んでそのまま夜のディナーに

少しオシャレな店がいいですね、そしておいいムードになった所で・・・」


「あ、ありがとう」

「参考になったよ」


まさか琴音さんにこんなに乙女みたいなところがあるなんてな。


「それなら良かったです!」


えへへ、と嬉しそうに笑う彼女を見ているとこっちまで嬉しくなる。


「でもそれをこんな俺でも出来るかな…」


なんだか途中でやらかしてしまって台無しにしてしまいそうである。


「なら私がその、彼女役になるのでデートの練習、私でしてみませんか?

友達が困ってたら力になりたいし」


もじもじして時おり俺の表情を伺いながら、拙く言葉を並べていく。

友達の為に恥ずかしくとも俺の彼女役になってくれるのだろう。


「ありがう、助かるよ!」


「いえ、私も普通の女の子とは少し違うと思うのでそこまで期待しないで下さいね!」


「いやいや、やっぱり琴音さんも年頃に普通に可愛い女の子だよ」


「っう!」


一瞬体をこわばらせたかと思うと、ウサギのように飛び跳ねて保健室から出て行って

しまった。


「今のはキモかったのか?」


しばらく保健室のベットでのたうち回りながら一人反省をしていたが、琴音さんからのデート楽しみにしてますメールで回復した。

今日分かった事はただしイケメン限るとゆう言葉は正しかったとゆう事だ。

身の程をわきまえよう。


用事を済ませて戻ってきた保健室の先生に事情を説明し、部室へと戻った。


そして週末、俺は悟史と琴音さんのふたりとデートした。



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