彼女の為に地獄から舞い戻ってきた彼氏

ゆうまる

彼女の為に地獄から舞い戻ってきた彼氏



「もういいかい?」

「まぁだだよ〜」


 私達、今かくれんぼしてるの!

 いつもテレビ見たり買い物デートばっかりでつまらないから……。たまには子供時代に戻りたいなって思って!


 でも、かくれんぼって結構楽しいのよ。

 普通は家の中や森の中、公園とかでしたりするんだろうけど……私達は違うの。どこでしてると思う?


 交差点のど真ん中なのっ!

 凄くない!? こんなチャレンジャー、世界中探したって、私達以外に絶対居ないわっ!


「──マユミ、危ないっ!! 」


 キィーッ!!


「……え?」


 突然、近くから凄い音がして、私は何者かに身体を突き飛ばされた。

 なので、『一体何?』と振り返ると……、


「きゃーっ!! アキヒコー!!」


 何と、彼氏であるアキヒコが車に跳ねられて死んでいたのだ!!


「アキヒコーっ !! 何で!? なんで私を庇って先に行っちゃうのよー!! 天国に行く時は絶対に一緒だよって言ってたじゃないーっ!!」


 瞳からポタポタと涙が零れ落ちる。

 ああダメ……。私アキヒコが居ないと絶対に生きていけないの。死んじゃう。もうダメ。


「あっ、そうだ! それなら私もアキヒコを追いかけて天国に行けば良いのよ!」


 ナイスアイディア。

 流石私っ!


 そうと決まれば、早速良さそうな車を見つけて跳ねられに行かなくっちゃね! あっ、あの車なんて良さそう。酔っ払ってフラフラしてるじゃない。丁度いいわっ!


「すみませーん! ちょっと私の身体をその車で跳ねてくださいませんかー??」


 私は車線へ飛び出して車に向かってバンザイする。

 すると突然、何者かが私を後ろから抱きしめたのだ!


「おい! 危ねーだろマユミ!」

「えっ!? アキヒコ!?」

 

 それはどっからどう見てもアキヒコだった。

 血まみれになってじゃっかん脳みそも飛び出しているが、それは間違いなくアキヒコだったのだ!


「どうして!? ついさっき死んだはずじゃ……」


 私はアキヒコのグチャグチャな頬にそっと手で触れた。うえー、ドロドロだ。


「ああ、死んださ。でも俺、閻魔様に向かって言ったんだ! 『俺が死んだら、誰がマユミを守るんだ』ってな……。『みぃつけた』ぜ……。マユミ」

「アキヒコ……」


 アキヒコは私を抱きしめる。

 なんて感動的な再会なのだろう。かつて、死んでから愛しの恋人の為に復活して、また地上へ帰ってきた人が居ただろうか?


 しかも、わざわざ閻魔様に頼んで……。

 ……閻魔様?


「……アキヒコ、貴方もしかして地獄に行ってたの?」

「おいおい、そこは触れるなよ」


 アキヒコは笑って私にチューしてくれた。

 うっ、何だか悪臭がする。

 まあいいか。後で地獄の体験談聞こーっと。


「あ、そうだ。マユミ。手出して」

「手? 良いけど……」


 私が右手を差し出すと、アキヒコはズボンのポケットから何かを取り出した。


「はいこれ」


 そう言って、私の人差し指に付けてくれたのは……。


「これ……指輪じゃない! 素敵っ!」


 とっても綺麗な指輪だったのだ!

 血まみれになっていたけれど、それはそれで今日の思い出だから良いよねっ!


「──結婚しようっ、マユミ!! 」

「ええっ! 勿論!!」

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