第四十八話『蒼桜の家族』

 天気は晴れ、ショッピング日和。

 可愛い服に可愛い義妹。

 義妹共々可愛くてごめんなさい、なんちゃって。

 やってきたのはショッピングモール。昔蒼空と来た所だ。

 定期的に来てはいたけど、語り部となると気分も違うなぁ。

「敬語の菫さんも可愛いです」

 第1話のまだ青かった頃のわたしの話だね。でも今のわたしの方が気に入ってるんだ。

「作者さんと一緒に菫さんも成長してるんですね」

 蒼桜ちゃんは感慨深そうに嘘泣きをした。

 いや、あんま感慨深さ感じないな、嘘泣き。

「じゃあ、懐古の意味も込めて、あのお店行きましょう!」

 1周年イベント!『過去イベントの思い出の場所を巡る』みたいな感じ?

 別にそんな記念でもないのに。

「四十八話記念ですかね」

 毎日が記念日なのかな。

「毎日必ず誰かの誕生日なんですよ」

 だとしても別にケーキ買って祝うわけじゃないでしょ。知らない誰かの誕生日なんて。

 閑話休題。

「ここがあのお店だね」

「はい。思い出のあのお店ですね」

「覚悟はいい?」

「はい。面白くするためなら、ネタにだってなってやります」

 そうして二人は歩き出した。戦場ランジェリーショップに向かって。

「ところで戦場で思い出したんですけど、物語シリーズ続編出るらしいですね」

 そうだね。でも『出るらしい』なんて言って結局この話の更新日にはもう発売してました、なんて笑えないからね。

「流石に更新に十日もかからないですよ」

 そこまで言って二人同時に思った。いや、普通にありえると。

「ちなみに作者さんはさっきの『閑話休題』の使い方を物語シリーズで覚えたらしいですよ」

 へー、微塵もタメにならない豆知識をありがとう。

 閑話休題。


 そんなわたし達を陰から監視する変態たちがいたりする。

「父さん、ここはやめよう。よくない」

「でも…」

「でもじゃない。変態呼ばわりされるぞ」

「蒼桜にされるならいつも通りだろ」

「それでいいのか変態親父」

「お前に言われるのも新鮮でいいな」

「あ、多分この人ドMだ。真性のMだ!」


 残念なことにわたしはそれに気づかなかった。蒼桜ちゃんは気づいてたかもしれないけど、何も言わなかった。

「あ、これ可愛くないですか? 菫さんに似合いそう! …あぁでもちょっと値段が高いですね」

「値札見して…うーん、確かに高いけどこれくらいなら…ギリいける、かな?」

「そんな無理しなくていいですよ! 安くても可愛いのなんていっぱいありますから、私の妄言なんて気にしないで下さい!」

 必死か。気遣わないでいいのに。

「それもそうだね。他のとこ探してみよう。あ、それなら次は蒼桜ちゃんの見よっか。安くて可愛いの探そうよ」

 そうして振り向いたら蒼桜ちゃんは泣いていた。え、なんで? わたし変なこと言っちゃった!?

「いえ、嬉しくて。『蒼桜ちゃんは小っちゃいから別にいらないよね』って言われることを覚悟してました」

 わたしはどんな極悪非道なお義姉ちゃんだ。

「そんなこと言わないって。ほら、行くよ」

「はい!」

 そんなこんなで結局、わたしは例のちょっと高いやつを買った。蒼桜ちゃんは何も買わなかったけど。

 他にも色々回って、両手いっぱいの戦利品を携えて家に帰ると、蒼空は料理を作って待ってくれいた。

 土曜日の担当はわたしなのに。

「暇だったからね。菫がせっかく蒼桜と遊んでるんだし、今日くらいは負担の一つ肩代わりしようと思って」

 頼んでないのにやってくれる。こういう優しいところが好きなんだ。

 ハプニングのあった三日目も終わり。

 明日は蒼桜ちゃんが帰る。

 名残惜しさを胸に抱えながら、二人一緒のベッドで眠った。


 翌日、昼。

 蒼桜ちゃんを迎えに、月詩つくしさんが来訪した。

 相変わらず、優しい人だった。遺伝だね。

「うちの蒼桜が迷惑かけちゃってごめんね〜」

「いえ、そんな…楽しかったです」

「うちの正弘が迷惑かけちゃって、重ねてごめんなさい」

「あー、それは本当に…」

「私からも、ごめんなさい」

「気にしないで。蒼桜ちゃんはまたいつ来てもいいからね」

「はい! 来週の土日にまた来ます!」

 それはやめなさい、と月詩さんの手刀。

 それは賑やかそうだけど、蒼空と二人きりの時間は大事にしたいかな。

「蒼桜」

 今まで黙っていた見ているだけだった蒼空がようやく口を開いた。なにか覚悟を決めたような顔。

「お前のこと、桃葉のこと、仁のこと、信じてみることにする」

 蒼桜ちゃんは振り返って、ふっと笑った。

「遅いんだよバカ兄」

 それに対してやはり蒼空もふっと笑う。

「悪かった」

 え、何? 兄妹シンパシー? わたしだけ蚊帳の外?

 寂しいなぁ。

「寂しがらないで下さいよ。これは菫さんの話ですし、私と菫さんもやろうと思えばできますよ。『義姉妹シンパシー』」

 蒼桜ちゃんの言葉にそうだよね、と喜ぶわたしと、やっぱり自分が正しいんじゃないかといぶかしがる蒼空がいた。

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