幕間『やっぱりいる』

十文字じゅうもんじ円花まどか


 話は水族館入場まで遡る。

 くるくるお兄ちゃんから言われたのは、くるくるお兄ちゃん達の計画を見守ること。

 だからあたしは、おにぃとエロいお姉ちゃんを陰からストーカーっぽく見つめてるおねぇ達を見守ってる。

「よし、二人はちゃんと戦争デート始めましたね」

「ちょっと待て市東いちとう次女。今デートのイントネーション違くなかった?」

「え? あってますよ。戦争デートですよ。今日中にキスしてすみれさんの力を封印してくれたらいいんですけどね」

「でもスミレ、名前に数字入ってないじゃん」

「ネタなんですから、そこまで気にしたら負けですよ。でも、数字が入ってると言えば…」

「だな。数字が入ってるのは…」

「確かに…」

「えっ⁉︎ なんでみんなあたしのこと見るの⁉︎」

 観察する側からされる側になっちゃった。突然で凄くびっくり。

「円花ちゃんの天使は何だろう?」

「十文字で『十』だから、〈鏖○公サン○○フォン〉じゃないですか?」

「ねぇ、マドカ。〈鏖○公サン○○フォン〉って言って」

「さ、〈さん○○ふぉん〉!」

 しかし、なにもおこらなかった!

「「でも、可愛い!」」

「もうキスしちゃったのか…」

「ちょっと悲しいです…」

「し、してないよ⁉︎ なんでそんなこと言うの⁉︎」

 あたしにはまだ伝わらない何からしい。帰ったらおとおさんに訊いてみよう。

「あの仁さん、私が実は一東いちとう姓だったってオチはないですかね…?」

「ないだろ」

「〈メタ…」

「それ以上言うな。何巻だと思ってる!」

「…的発言がすぎました」

「いやしてないだろメタ的発言。どっちかっていうとパロネタ…でもまぁいいか…」

 おねぇはくるくるお兄ちゃんに怒られて不満そうな顔を見せるけど、すぐにその表情をしまいこんで、みんなに向かって叫んだ。

「さて、琴○も顔負けの完璧なサポートでこの戦争デートを優位に進めましょう!」

「ここは水族館だ。空中艦じゃねぇ。忘れんな」

 ってくるくるお兄ちゃんに怒られるくらい。

「すみません。あ、移動するみたいです。追いかけましょう」

 あたしもみんなについていく。きっと楽しいものが見れる。

「フェーズ3、いよいよ始まるんだね」


 楽しいものが見れる。そう期待したのに、目の前のおにぃとエロいお姉ちゃんは喧嘩してるみたいにしか見えなかった。

「ねぇジン。あれ止めた方がいいんじゃない?」

「待て、あいつらを信じろ」

 喧嘩を止めようとする金色のお姉ちゃんをくるくるお兄ちゃんが制した。

 だからあたしも、動かないで見守ることにした。


【オマケ】

「はっ⁉︎ 市十いちとうの可能性も…」

「ねぇよ」

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