第二十五話『市東君はロリコンですか』 第25話『いいえ違います』

 とりあえず脳の使用先を勉強から円花ちゃんに関する問題へとシフトする。

「それで、円花まどかちゃんは今日はどうするの? もう遅いけど、お父さん迎えに来るんだよね?」

「なんか、夜が本番だから泊まっていけっておとおさんが言ってた。おとおさんは今車停めにいってるから、後であいさつには来てくれるらしいんだけど、そのあと帰っちゃうって」

「へー…」

 一緒に帰ってくれないのか…

「それでエロさん。おにぃと三人で寝ていい?」

「…えっ、あっ、その、えっと、ええっと。えぇーっ!!」

 円花ちゃんと蒼空そらと三人で寝る⁉︎ てことは、蒼空と寝るってことで。蒼空と寝るってことで!(二回言った)

「え、だめ、そんなのダメだよ円花ちゃん!」

「そうだな。じゃあ、円花ちゃんは僕と二人で寝ようか」

「…えっ、あっ、その、えっと、ええっと。えぇーっ!!(コピペ)」

「だって円花ちゃんは僕の従兄妹だから、すみれを巻き込むわけにはいかないよ。君はいつも通り寝ててくれればいいから」

「いつもナニしてるの?」

「「発音が少し違う!」」

「でも、二人が一緒に寝ることは認めないから!」

 こうなったら意地でも円花ちゃんと蒼空を一緒に寝かせないんだから!

「え、なんで? もしかして菫、円花ちゃんと寝たいの?」

「いや、でも蒼空が一緒に寝るよりわたしと一緒の方がいいかなって思って…」

「なんで?」

「だって、まだ幼い女の子を年頃の男子と一緒に寝かせるっていうのも…」

 って言いながら気づいた。目の前にいるこの人、絶対にそんなことしない。

「…百歩譲って蒼空だからいいとして、でも、それじゃあロリコンみたいじゃん?」

「おにぃはロリコンなの?」

「違うよ」

 蒼空が円花ちゃんに変なこと教えるなという目で私を見てくる。わたしも負けずに反論だ。

「ロリコンはみんなそういうんだから」

「なんで僕がロリコンって決めつけて話が進むんだよ。確かにちっちゃい子は可愛いと思うけどさ」

「ほら、やっぱりロリコンじゃん」

「はぁ? 小さい子を可愛がることの何が悪いんだよ。まだ性的接触のなんたるかも知らない純粋無垢な少年少女を可愛がらずにいられるか! 無駄な知識を身につけるから僕みたいになるんだ!」

 うん。ちょっとズレてる気がする。

「あたしは知ってるよ」

「「円花ちゃんは黙ってて!」」

 その後、ケンカがヒートアップして、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ揉め合いになっちゃって蒼空がわたしをベッドに押し倒した。

「これが、おとおさんが見てこいって言ってた、夜の運動…」

「おぉ、さかってんな」

 円花ちゃんとそのお父さんの十文字じゅうもんじ誠司さんの茶々が入って我に帰った。

 だけど、誠司さんはお泊まりに必要な道具を置くとすぐに帰っちゃって、家にはまた三人が残った。

「円花ちゃんは、わたしと寝ようね」

「やったねおにぃ。三人で寝ていいって」

「違うよ円花ちゃん。そんなこと言ってないよ?」

「第一、三人もどこで寝るんだよ。いくら円花ちゃんが小さいからって、ベッドに三人は入らないよ」

 たしかに。

 でも、円花ちゃんは自信満々に

「簡単だよ!」

 と叫ぶ。

「じゃあ、ちゃんとした方法だったら三人で寝ようね」

「はっ⁉︎ 君何言って…」

「うん! まずね、あたしが端のほうで寝るの。で、その隣におにぃが寝るの」

「うんうん。それで? もうスペースはないけど、どうするの?」

 あれだ、エロいお姉ちゃんは床で寝るの! みたいなパターンだ。

「エロいお姉ちゃんは、おにぃの上で寝るの。き○ょーいってやつ!」

 それは、そう言う意味じゃないかな…




「ねぇ、本当にいいの? あたしの我儘って言い訳ができるのは今日が最後かもしれないよ?」

「まるで僕が菫と寝ることを望んでいるかのように言うな」

「エロいお姉ちゃんもいいの? あたし一回寝るとなかなか起きないから隣で何してても全然気にしないよ」

「まるでわたしが欲求不満みたいに言わないで」

「わかったらもう寝な。おやすみ」

「おやすみ、円花ちゃん」

「うん! おやすみ」

 僕は円花ちゃんが僕のベッドに入ったのを見計らって、扉を閉めた。

「じゃあ、蒼空もおやすみ」

「うん、おやすみ」

 そうして菫は自分の部屋に消え、僕は一人残された。

 この家にソファがあれば、二人を二つあるベッドにそれぞれ寝かせて、僕がソファに寝ることも可能だったが、無い物ねだりをしても仕方がない。

 僕はリビングに降りると、テレビをつける。久しぶりに深夜アニメでもみようかと思ったのだ。どうせ明日は休みだ。朝まで起きていても別にいいだろう。

 円花ちゃんのうちに泊まるという我儘のせいだと、言い訳させてくれ。

 やっていたのはラノベ原作の『同棲系アニメ』の、親戚が居候する回だった。なんか聞いたことあるな。

『わたしは、お兄ちゃん達が同棲を続けてもいいのか、やめた方がいいんじゃないかって思ってここにきたの。しばらく泊めてね。あ、いつも通りにしてくれていいよ。ちょっとでもいかがわしいことしたら、お母さんに報告するから』

 なるほど、修羅場ですな。

 ところでこの妹はどこで寝るんだろう。円花ちゃんのせいで、そんなことを考えてしまった。妹に寝床を取られ、この主人公も寝られないのだろうか。

「えっ? びっくり、蒼空がラブコメアニメ観てる」

 菫が突然現れる。こっちもびっくりだ。

「しかもそれ『一つ屋根の下暮らしてみたら』の二期三話でしょ。最後にお風呂で洗いっこシーンがあるよ」

 妹いるのに洗いっこするのかよ。

「ヒロインと妹が洗いっこするの」

 僕はそっとテレビを消した。

「どうした?」

「いや、蒼空寝ないのかな〜寝られないのかな〜って思って」

 まぁ、その通りだが。

「それでさ。円花ちゃんの前で言うと変に誤解されて曲解されて報告されると思ったからやめたんだけど………わたしの部屋で寝ますか?」

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