第7章

 俺は構うことなく、ソファから立ち上がると、片隅に置いてあった段ボール箱から、無造作に数巻のDVDを掴みだし、卓子テーブルの上に並べる。

 別に珍しくも何ともない。

 レンタル店の『18禁コーナー』に行けば、当たり前のように並べられてある、

『人妻もの』

『熟女もの』

 といった類の作品である。

 ストーリー?

 そんなもの話しても仕方がない。どれも同じだ。

 AVだからな。

 大抵が夫との間に不満を抱える人妻が、若い男とデキてしまい、せっせとまくるだけで終わるというもんだ。

 俺が手に取ったのは五本、パッケージには相応の年齢の女性が、なまめかしい姿で写っていた。

『これがどうかしたのか?ウチは別に法に触れるようなものは制作・販売しちゃいない。』

 エガワ社長はそう嘯き、また煙草をふかす。

『パッケージと俺が出した写真をよく見比べても、そう言い切れるかな』

 彼は煙草を口の端に咥えたまま、不快そうな表情のまま、言われた通りに一本一本見比べた。

(いや、正確に言えば”フリ”をしただけなんだろう)

『いつまでとぼけ通すつもりだね。』

『何が?』

『AV女優さん達さ。メイクをして、幾分表情を変えちゃいるが、そのパッケージに映っているのは・・・・』

 彼はパッケージを放り出すと、腰に手を回し、何かを抜きかけた。

 .38口径のコルト・デティクティヴだった。

 しかし、その瞬間には、俺はもう既に左腋のホルスターからM1917《あいぼう》を抜き、彼の額に銃口を向けていた。


『銃から手を放してソファに置け。この距離なら絶対に俺の方が有利だ。頭を吹っ飛ばされたくなかったら、言うとおりにした方がいいぜ』

 明らかに震えていた。

 まだ火の点いたままの煙草が口から落ちる。

 俺はそいつを片手で摘み、灰皿に押しつける。

『い、命だけは助けてくれ・・・・』

 彼は俺の指示通り、卓子テーブルの上にリボルバーを置いた。

 M1917の銃口はそのままで、今度は拳銃を持ち上げ、シリンダーを振り出し、十段を床に落とす。

『俺は殺し屋じゃない。大人しく洗いざらい話してくれれば、これ以上別に何もしない』

 次に俺はポケットから、ICレコーダーを出した。

『断っておくが、あんたには黙秘権って奴がある。だから後で警察おまわりにこいつを聞かれても、自分が不利になるようなことは話さなくっても構わん。もっともこっちだって拳銃なんか突き付けたんだからな。こいつを提出したところで、あっちじゃ証拠にもしてくれないだろうがね』

 レコーダーのスイッチを入れ、奴の顔の前に突き出した。

 社長は大きく唾をのみ込み、それからゆっくり話し始めた。

『・・・・間違って貰っちゃ困るが、こっちは脅迫なんかしちゃいない。向こうから進んで志願してきたのさ・・・・』

『志願?』

 エガワ社長は煙草を喫ってもいいかと聞き、俺が許可すると、卓子テーブルの上の煙草入れから、震える手で一本取り、火を点ける。

 



 

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