黄色い頭の男子生徒

 やはり、金髪は目立つ。

「新入生代表挨拶 音宮澪。」

司会の先生の声で立ち舞台にあがると、朝のあの人は案外すぐに見つかった。


 私は深呼吸し完璧に暗記した挨拶を読み上げた。舞台からの見晴らしはよかったが、生徒一人一人と目を合わせられるほどの余裕はなかった。

 足が震えそうなのを堪え、生徒の顔を見渡しながら読み上げる。だんだんと視界が狭くなるのが分かった。


 黒色の中に黄色の点を見つけ、そこを見つめているとその生徒の顔がだんだんと鮮明になり、目が合った。前にも私はこの顔を見たことがある。どくん、心臓が高鳴る。一瞬見つめあったが、居た堪れなくなり目を逸らした。


 どこで見たのだろうか。記憶を辿る。今朝はあの人の顔は見ていない。今が初めて。中等部の同学年にはあんな子はいなかったし––––もし中等部にいたとしても校則は知っているだろうから、編入生だ。


 としたら、どこか道端ですれ違ったか。

 いや、さすがに一度すれ違っただけではわからないだろう。では、いつどこで。横目でその男子生徒を眺める。

 顔色は金髪のわりには悪く、どこか病弱であった。体調が悪いのか。すぐに倒れそうだ。

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