第2話(理性)


『困った困った困った困った!』




ん…どうしたんだろう?

僕はベッドから起きた。時計を見ると、午前6時半を過ぎている。確か、この時間は「孝介」が学校に行く時間だ。

僕は、まだ眠たい神経に刺激を与え、ゆっくりと目を覚ました。そのまま<脳>に、孝介の視覚情報を送るよう依頼をしてみる。

「おはようございます、理性さん。現在の視覚情報です。」

「おはようございます、脳さん。今日もよろしくお願いしますね。」

僕は脳に挨拶をし、視覚情報を読み取った。


『あああああ、どうしようどうしよう!テストなのをすっかり忘れてた…』

『もしもし!…あのさ、今日って、日本史のテストあるよな?』


―――孝介、テストについて困ってるの!?


僕は、孝介が大慌てしている映像を見つめた。孝介は絶賛「テスト」というもので大騒ぎしている。そして焦ったまま友達に電話をし、日本史のテストについて聞いていた。


僕は孝介の言う「テスト」の内容を細かくは分かっていない。が、その大切さはずっと見て来たつもりだ。ここは「理性」として、孝介を助けるために提案をするんだ!

僕は「孝介の思考」に問いかけようとした…その時。


『ヤバい…俺の本能が休めと言っている気がする。』


僕はハッとして、隣の「本能の部屋」を見やった。

なるほど。この機会を「本能」も見逃していないんだね。

僕は息を整えると、「孝介の思考」に問いかける。

「孝介。このテストは孝介にとって大切なものだよ?挑戦はしてみないと!」


『でも、このテストは期末試験だし、評定を取るには大事なものだ…やるだけやることも大切なのかもしれない。』


僕はニコッとして、隣にいる「本能の部屋」を見た。

今頃きっと、僕がいることでイラついてきたかもしれない。

とりあえずここは、僕が「本能の部屋」に行って交渉してみよう。

僕は立ち上がると、隣の部屋をノックした。

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