小春は深くため息をついて、理由を話し出した。


「実は最近、いやがらせを受けていて……」

「いやがらせ?」

 

 お蘭と白菊はそろって、首を傾げる。


「はい。ある日、文が届きまして。そこには私の接客態度が悪いとか、私の見た目が美人画とは違うとか……。とにかく、私に関することだけなんですけど、悪口が書かれていて。それからがお店の悪口まで噂されるようになったんです。注文してから提供されるのが遅い。団子もお茶もまずいって。そのせいで、人がこなくなってしまったんです」

「許せないにゃ!」


 白菊はべしんと、怒りでしっぽを床に叩きつける。


「なんで、小春さんがそんな目に遭わなきゃいけないのにゃ。同じ接客をするモノとして、許せないのにゃ!」


 白菊はお蘭の着物の袖をつかんだ。


「お蘭様! 白菊にいかせてくださいにゃ!」

「白菊もちょっと落ち着きな。まだお客さんから、依頼内容を聞いていないだろう」

「にゃ! そうでしたにゃ」


 白菊は自分の失敗を誤魔化すように、顔を洗うしぐさをする。お蘭はそんな白菊の行動に苦笑をこぼし、小春に向き直った。


「それで、あなたのご依頼はなんだい?」

「私がお願いしたいのは、接客です。私がお店に出ると、お客さんがこないので、かわりにお店にでていただければと……」

「小春さん。いやがらせに負けちゃだめですにゃ。白菊と一緒に、お店に立てばいいですにゃ」

「白菊さん……」


 白菊は相当怒っているのか、何度もしっぽを激しく床に叩きつけている。

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