13

 カーンと遠くで鐘が鳴り、申刻(十五時~十六時)になったことを知らせる。


「今日の仕事はしめぇだ! 喜助ぇ! 紅丸を連れて、こっちこい!」

「はーい! 紅丸さん」

「にゃ」


 紅丸は喜助に抱っこされて、仁平のもとに向かった。


「親方ー。紅丸さん連れてきましたー」

「あぁ。紅丸、ありがとよ。今日の支払いだ」


 仁平がお金を包んだ唐草模様の風呂敷を、紅丸の首にくくりつけてやる。

 仁平はちらりと喜助に視線をやってから、紅丸を見た。


「喜助はどうだ?」

「反抗しないから、教えやすいにゃ。飲み込みもまぁ早いにゃ。だけど、いかんせん手が遅いにゃ」

「うーん。反論できない」


 紅丸の評価に、喜助は文句を言うことなく受け入れた。


「まぁ、そこはやっていくうちに慣れるだろう。明日から数日間、頼んだぜ紅丸」

「わかったにゃ」


 紅丸は喜助の腕を軽く蹴って、近くの民家の屋根に上がった。


「明日は直接ここに来るから、迎えはいらないにゃ」

「わっかりました。また明日も、よろしくお願いしまっす!」


 喜助が勢いよく頭をさげると、紅丸は二股にわかれたしっぽを振って、去っていった。

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