【Roster No.11@ウランバナ島南西部】

 あたしたち神佑じんゆう大学デスゲーム愛好会は本日の本番に備えて日々鍛錬を積み重ねてきた。――鍛錬を積み重ね? ん? ま、いいか。合ってる合ってる。こういうのはフィーリングっしょ。

 今大会は『ウランバナ島のデスゲーム』と呼ばれており、今回、日本では初めての開催となった。

 あたしたちが生きている間に日本で開催されるとはね。そもそも日本国内で、合法的に――合法的かこれ? 細かいことはいいや。生きている人間に対して銃を撃てる機会なんて、普通に生きていたらないっしょ。警察官でも、あるかないかっしょ。


 参加するからには、生き残って一億ゲットしないといけないっしょ。


 あたしたちは過去に行われたデスゲームのアーカイブを確認し、優勝チームがどのような作戦で勝ち残ったかを徹底的に研究した。デスゲーム愛好会なんでね。メバで行われた『イルドタール村のデスゲーム』はアツかったなあ! ……と、この大会の話をし始めたら長くなるから結論を先に言うと、を入手しなくちゃいけない。ってことがわかっている。このがあるかないかで生存率が段違いっしょ。


 さて、なんでしょう?


「車最強! 車最強! 車最強!」


 助手席に座るあたしの相棒ハルアキが答えを言ってくれた。考える時間なかった? めんごめんご。大体わかるっしょ。相棒の真後ろの席のヨシマルも「車最強! 車最強!」と拳を突き上げている。車マジまんじなんだよなこれが。


「これで怖いもんなしっすわー」

「っすわー!」


 イェーイ。過去の大会から傾向と対策を練りに練ってきた。車は、ランダムに。参加者は自由に乗り回して構わない。エンジン吹かしてぶんぶんぶんっしょ。こんなところまで来て免許の有無を気にするやつはいないっしょ!


 ガソリンが足りんくなったらガソリンスタンドに寄ればいい。本土でもあるっしょ? 無人のガソスタ。ああいう感じで、足りんくなったら給油できる。その前にバチボコに撃ちまくられたら、新しい車に乗り換えりゃいいっしょ。こっちもあたし以外は撃ち返す。あたしは運転に集中しないと、四人仲良く事故っちゃう。過去の大会で、川にドボンしたり車と車が激突したりがあった。あたしたちはそんなケアレスミスみたいな死因は嫌なので、誠心誠意全力で運転する。


「このスイッチって、音楽聞けるやつ?」


 相棒がミュージックプレイヤーの再生ボタンを押した。あたしが「そうだよ」と答える前にポチッとなと押して、スピーカーからゴキゲンなメロディーが流れ始める。どこのなんてミュージシャンかは存じ上げませんが、……あ、表示されてんな。


「アラン・ウォーカー?」


 アランはアランでもリックマンなら知っている。『ダイハード』の悪役だったり、ハリポタのスネイプ先生だったり。このウォーカーさんは有名な人?


「ああ、はいはい」


 ヨシマルの隣、つまりあたしの後ろの席のシューコが「この曲ね」としたり顔で頷いている。


「知っているのかシューコ」

「いろんな賞を獲っているアーティスト」

「その道では有名人なのね?」

「うむ」


 ハルアキとヨシマルはなんだかわからなくとも曲に合わせて口パクしていた。ふたりのこういうアホっぽいノリ、嫌いになれないっしょ。


「ん?」


 あたしはアスファルトで舗装された道路を、脱線しないように走っている。道路を横切ろうとしている四人組がいた。視力だけは自信があるから見間違いじゃないっしょ。他チームだ。つまりは敵。


「敵はっけーん!」


 ハルアキがサイドウィンドウを開こうとする。左手にはAKM。映画みたいに身を乗り出して撃とうっていう作戦なんだろう。


「待って」


 あたしはハンドルから左手を離して、ハルアキを落ち着かせた。車が真に最強なところが見せられそうだけど、チームメンバーが窓から飛び出してしまうのは避けたい。


「あぶなーい!」


 クラクションをリズミカルに鳴らして警告しながら、あたしは思いっきり。警告はした。したのでオッケーっしょ。横断歩道もないのに横切ろうとしてるのが悪いっしょ。


 <<ユウミ は 車 で アンリ を キルしました>>


 最後尾の一人をまずははね飛ばす。前方に身体が飛んでいったもんだからタイヤが押し潰していった。ガタガタと車が二回揺れたのは、前のタイヤと後ろのタイヤのぶん。


「あーぶないよぉ、そこ道路だよ! 道路にいたんだから轢かれても仕方ないっしょ!」

「そうだそうだー!」

「車最強! 車最強!」


 ボルテージが上がる車内で、シューコは携帯情報端末を片手に「キルログ流れた」と冷静だった。三人が浮かれポンチでも、シューコは落ち着いている。好き。


【生存 89 (+1)】【チーム 24】

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