「椿苺とアールグレイ」
アフタヌーンティーが流行っていると聞いたの。
「要は、紅茶飲み放題のお菓子セット」
「一人で行くのは寂しいし、写真も撮りたいし」
ついでに、たーちゃんを連れて行くことでたーちゃんが支払ってくれるし。
「行きませんよ」
「えぇっ!?」
「プライベートまで一緒に行動したくないので」
なんだかそっけないの。
もしかして:嫌われた……?
いやいや。そんなはずはないの。組織のスーパーエースにして究極美少女の秋月千夏に、嫌われる要素なんてないの。なんでだか人は離れていくけど。理由はわからない。わたしはなんも悪くないし。ただ、ちょっと、他の人よりも天才的なだけであって。
「な、なんで泣きそうなんですか」
「涙の数だけ強くなれるの」
「秋月さん、ご自分を野花と勘違いしていらっしゃる?」
「いいえ、唯一無二にして銀河一の逸材」
「普段通りだった」
そらそうよ。
たーちゃんに嫌われた程度でへこたれるようなわたしじゃないの。次の相棒を見つけて、さらなる飛躍を目指すの。
でも一ヶ月ぐらいはへこむ。
「わたしのことは嫌いになっても、組織のことは嫌いにならないで、たーちゃんはたーちゃんの目標のために、これからも一日一歩、三日で三歩ずつ進んでいってほしいの」
「何の話ですか?」
わたしから言わせようとするとは、たーちゃんもむごいことをするの。
「たーちゃんがわたしのことを嫌いだからヌン活したくないのかと思ったの」
「ぬんかつ? ……え、いや、秋月さんのことは、あくまで相棒として嫌いではないですよ」
「ぬ?」
「なので、仕事以外で関わると、その、周りから誤解されるとめんどくさいなと」
あーね。
今もたーちゃんは制服(補足説明しておこう! たーちゃんは平常時に警察官なので、制服姿なのだ! そしてここは交番)で勤務中。
「どうしてこの時代にヌン活が流行っているのかの調査のため、としたらダメなの?」
「それで作倉さんが納得しますかね?」
「いけるいける」
それっぽいレポートを提出すれば完璧なの。
あと、仕事ってことにすれば経費で落ちるの。
これでたーちゃんの財布も守られるし、わたしは美味しいスコーンとかクッキーとかケーキとか紅茶をいっぱい飲めてハッピーだし。
一石二鳥なの!
領収書をもらうのを忘れないようにしないと。
この辺はたーちゃんがしっかりしてくれていれば大丈夫大丈夫。
頼むでたーちゃん。
「いけるかなあ……」
「早速予約するの!」
「許可取ってから予約取りませんか」
「たーちゃんいつなら空いてる?」
「どうしても行きたいんですね。俺も興味はあります」
逆に行きたくない要素あるの?
無料で美味しいものが食べられるのに?
今回がうまくいったら、毎回お仕事ってことにすれば美味しいもの食べ放題なの!
「なんか、悪いこと考えてませんか」
「経費でタダメシ!」
「繰り返してたらクビになりますよ」
わたしをクビにしたら組織の社会的損失が大きいの。
才能に満ちあふれているわたしを追い出す理由がないし。
「万が一クビになったら、警察に転職するし」
「難しいと思います」
「たーちゃんができているならわたしにもできるの!」
「その理論はおかしくないですか?」
あ、でも、この間会った人の部下になるのは嫌なの。
「そういや、たーちゃんはなんで警察になったの?」
「前に話しませんでしたっけ」
話されたような。
話されていないような。
思い出せないってことはそこまで印象に残っていない話のような?
「まあ、いいですよ、所詮はその程度ということで、逆に安心しました」
むむ。
暗に記憶力のなさをディスられているような気がするの。
「待って。思い出す」
「秋月さんは、作倉さんからのスカウトでしたよね」
「そうなの。未来のエースとしての輝きを見過ごせなかったってこと!」
「そういうとこなんだろうな……」
どういうとこ?
まあ、わかってくれているならいいの。
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