第45話 変身! 戦いの終わり! 皆で全裸!
「…………!」
綾水の攻撃の余波で、咲枝も一緒に吹き飛ぶ。さらに、志村胡夢と咲枝は、その凄まじい威力により変身が解け、衣装が弾け飛んでいく。
「……僕……は……っ」
「へ。シムラクルム。あんたはな。結果を決め付けて
「………………いや、良い。これで。僕は『暗黒』だ。初めから、最後まで」
「……そうかい。酔狂な
ドボン。吹き飛んだ先は、温泉の湯船だった。高く水飛沫を上げて、咲枝は咄嗟に庇いながら、ふたり同時に着水する。
♡
「ぷはっ! 危な……。おい大丈夫かいな」
「けほっ! けほっ!」
「おっ」
咲枝は。腕の中で咳き込む少女に、『シムラクルムの暗黒エナジー』を感じなかった。抱き上げて、顔を確認する。
「……けほっ。ん。あれ……。お姉ちゃん?」
「おーう。
お互い全裸のふたり。見たところ外傷は無さそうである。胡夢はしばし自身を確かめて、
「無いよ。って、僕どうしてこんなところに? ここは?」
「あー。温泉や。
ゆっくり降ろしてあげて、隣に座らせた。
「おんせん……!」
「一応、パパママの許可
「すごい! あったかい!」
「そらそうやろなあ」
目をきらきらさせて、ばしゃばしゃとはしゃぎ始めた胡夢。それを見て、咲枝は嬉しくなった。
「咲枝さーん!」
「お? 綾水やんか。なんで全裸なん」
「あの一撃に『全てのエナジー』を込めましたのよ。そりゃ全裸ですわっ」
「あー……そういう仕組みやったかそういや」
「それに、急遽ウインディアから貸していただいたブレスレット、完全に適合できていなかったみたいで」
「そうなんや。まあ1発2発でも撃てて良かったやん」
そこへ、綾水もパタパタとやってきた。続いて、ナギとリッサ、そしてララディが見えた。
「……そうか」
「ええ。あんたがザイシャスを生かしたから。私もグリフトを殺してはいないわ。拘束してミキの所に送ったから」
「すまぬ」
「良いわよ別に」
「あれでも。カルマなのだ。改心しなければ、こちらで処分させて貰う」
全員、全裸であった。
「ナギ。リッサ。ララ。
「構わぬ。新装置の試用も兼ねていたのでな」
「私はララの望み通りに動くだけ」
「あはは。困った時はお互い様ですって。咲枝さん。……で」
「?」
3人も、湯船に浸かる。そこで、人間姿のララディが微笑みながら言った。
「ポポ兄さん。ここは『女湯』です。いつまでいらっしゃるので?」
「ディッ!」
「お」
「あら」
ポポディが。咲枝の背後からふわふわと現れた。
「い、いや……勝利の『やったー』のタイミング逃したディ……」
「アンタ
「ひどいディ!?」
「まあまあ
「……今なったら絶対怒られるディ」
「兄さん! 早く出ていってください!」
「ディ〜っ!」
ララディに怒鳴られ。ポポディは飛んでいってしまった。
「全くもう」
「……なんか兄妹っぽい絡みやったな。貴重やん」
「お、お恥ずかしい……」
♡
その裏で。
「……通信機は粉々なんだが。おい空石。あいつら呼んで来い。まだ色々終わってないぞ」
「いやお前。……行ける訳無いだろ今」
三木と空石が、旅館のエントランスにやってきていた。ポポディが逃げ込んだ先でもある。
「実家はどうだった?」
「……祖母が居たよ。普通に俺が帰ってきてアーチェリーの練習してると思ってる」
「使い所あってよかったな」
「全くだ。……あ」
「!」
そこへ。
あと3人。女性が現れた。
「へぇー凄い! マジのワープじゃん! もう着いたの有馬!?」
「おおー。良い感じの旅館。あ。ケンタ! 走るなおバカ!」
「懐かしいですねぇ。かけるちゃんも、りくちゃんも全然変わってない。ケンタ君は大きくなったわねぇ」
「なみはマジでマダムになったな……」
「かけるちゃん、ご結婚は?」
「はーいうるさいうるさいうるさーい! 絶賛彼氏募集中だぞ♪」
「アラフォーのブリッコはマジでキツイ」
「うるさいうるさーい。まだ34だもん!」
「ほんと、精神年齢そのまま年食ったな。かけるっち……」
「なみっちだってエナリアのことも昔から知ってるオナチューの快斗君と結婚したのに離婚してるし一緒でしょー!?」
「それ言うな! バカケル!」
「変身ヒロインの生々しい『その後』の物語……」
ショートボブの大空かけると。
金髪癖っ毛の花山りく。
そしてウェーブロングの海野なみだった。
「2代目の方々」
「こんにちはぁ、空石さんに三木さん。ここ使って良いの?」
「……まあ、住民は避難してますけど……」
「じゃあ良いね! 残留エナジー散るまで自由ってことで! あ。おふたりは、なみっちの旦那さんと男湯でケンタ見ててね! さあ入るよ! 有馬温泉!」
「えっ――」
♡
それから。
「疑似ワープ装置」
「そうだ。っていうか前に説明しただろ春風」
「いやぁあはは。真面目に聞いとらんかった」
「……お前が前職で営業成績悪かったのは会社や職種じゃなくてお前のそういう所じゃないのか?」
「三木さん言い方キツイわあ」
「…………あのな。そもそも、ウインディアにある『エクストリームクラック』は、人間界にあるエナジーを座標にして開かれる。だから今回は東京だったし、1000年前は京都だった。つまり、座標さえこっちで指定すれば、どこにでも繋げられるという訳だ。だから、例えば北海道から一度ウインディアに戻り、またウインディアから沖縄まで繋げば擬似的にワープが可能という話だ」
「なぁるほどなあ。三木さん天才やん。どないしてん」
「……ナギ女王の技術提供があったからだ。カルマもカルマで、この50年間色々とやっていたらしい」
「ナギと信頼関係築きすぎ
「まあな。当分は向こうの世界で暮らすつもりだ」
「は?」
数日後の会議室にて。
「ああ言って無かったか? 向こうに大使館を建てる。カルマの文化はまだよく分かってないが、その方がお互い自由にできるしな」
「?? え、待って。どゆこと? は?」
「……咲枝。三木はナギ女王と懇意だ」
「は?」
「は?」
「はあああああっ!?」
会議に出席している、ナギと見比べて。彼女は頬を染めていた。咲枝は叫んだ。
「あ、あんたら付き
「さて次の議題だ」
「ちょちょちょ!」
「エナリアを器とする最強の暗黒エナジー怪人『シムラクルム』は完全に倒された。だが、終わりではない。エナジーレーダーにはまだ反応が残っている。暗黒エナジーは日本中にばら撒かれたままだってことだ」
「ちょ……っ」
咲枝の叫びも虚しく無視され、会議は続く。
「つまり、ウインディアを経由しない『人間界生まれの怪人』が、今後日本全国に発生すると予測されている。……エナリアとしても、怪人対策本部はまだまだ戦う必要があるってことだな」
「……そうですわね。あの『シムラクルム』レベルの強い怪人が出るのでしょうか?」
「いや、あれはエナリアの孫という『器』による強さが大きい。エナジーバランス的に、今後発生する怪人は高く見積もっても『つよ怪人』もしくは、稀に『幹部クラス』が出る程度だ」
「それなら……」
「ああ。対処できる。だが、日本全国だからな。今、各地に支部を作れないか政府に相談している所だが……まだまだ疑似ワープを使うことになる。ウインディアとは、より緊密に連携を取っていきたい」
「はい」
ララディが頷いて返事をした。
「わたしも一度、ウインディアに戻ります。わたしの戦いは、『これから』ですので」
「協力するやろ当然。なあ空石さん」
「!」
「勿論だ。ララ王女には今回本当にお世話になった。それに、我々のこれからの『活動』を円滑にする為にも、ララ王女との関係は続けていきたい。なんとしても王女がウインディアで政権を取れるよう、尽力しよう。次は俺達が、協力する番だ」
空石が言い切った。敵対していたカルマとの交渉。ウインディアの、エナジーアニマルの情報。『リッサ』という戦力の貸し出し。ララディが人間界にもたらした利益は計り知れない。
「その通りや。なんでも言うてや、ララ」
「……! ありがとうございます!」
ララディが頭を下げた。
物語は、終わりへ近付いている。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回予告!
〈綾水〉:勝ちましたわ〜っ! 咲枝さん!
〈咲枝〉:お疲れさん。はー。ようやっと終わったな。
〈ふたり〉:次回!
『美少女エナジー戦士エナリア!』
第46話『変身! ちょっとずつ変わる関係性!』
〈咲枝〉:温泉で生き返るわあ。やっぱ有馬やな。有馬しか勝たん。
〈綾水〉:良いお湯加減ですわねえ。地元が温泉街なんて羨ましいですわ。
〈ポポディ〉:……このコーナー、もう予告とか関係ないディよね……。
〈咲枝〉:ん〜? まあ、言うて後は戦後処理キチッとせなアカンからなあ。倒して終わり
〈ポポディ〉:なら良いディ。みんなお疲れさまディ!
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