第23話 変身! いきなりボスの元へ!?

「うーん……」

「咲枝さん? どうかなさいました?」


 ララディから、歴代エナリアの話を聞いて。咲枝が考えるポーズを取った。


「やはり、皆さん10代前半でエナリアになっていましたわね。わたくし達は……」

「いやまあ、それはえねん。2代目の方々と実はあんま年齢変わらんとか、そんなんはもうええねん」

「…………いやでも、ひと回り以上くらいは離れてますわよ?」

「初代が『エナジーウォーリア』や。そっからエナリアが始まった」

「え、ええ……」

「ほいで、ミラージュウィンドはまあえとして。2代目達が『エナジースカイ』『エナジーマリン』『エナジーフラワー』やな」

「はい」


 咲枝の、提案する問題とは。何を言うか大体予想の付いた綾水は、次の言葉を待つ。


「ほなアタシらは、『エナジー何』になるんや?」

「あー……」


 今は、ウインディア王城、つまり敵怪人の根城に潜入している訳だが。裏切りの幹部マッツン、そして正規軍によって、この大広間だけは安全地帯となっている。咲枝達からすれば、ポポディがブラストブリングを持ってくるまで『待ち』の姿勢である。リッサ達はこれからの動きを確認し合っている。咲枝達とは別に、潜入した目的があるのだ。


「主に変身時の姿や、戦い方がそのまま名前になっていますね」

「女王様」

「いえ。ララと。そうお呼びください。咲枝さん。綾水さん」


 ふたりの会話に、ララディが入ってきた。


「おふたりの人間界での活躍も、知っていますよ」

「ホンマ?」

「リッサと一緒に、人間界に行っていましたから。彼女にエナジーを補給するために」


 ふたりを見て、ふむ、と顎を撫でた。


「咲枝さんは『エナジージュードー』。

 綾水さんは『エナジーシューター』でどうでしょうか」

「ダサっ!」

「え」


 ララディの提案に、咲枝が即答で否定した。


「いやちょ……。まあ、異世界やから、美的センスとかそういうのも違うんは分かるねん。せやけど、流石に嫌やわ。すまん。そもそもアタシが悪かったわ。柔道でしか戦えへんのに変身ヒロインの変身ネーム欲しがったアタシが……」

「咲枝さん……」

「アタシ……。特徴関西弁と柔道しか無いんやな……」

「咲枝さん……。あ、巨乳がありますよ」

「……『女児』から離れる特徴やんけ……」

「あぁ……」

「しかも別に、わざわざ言うほど巨乳ちゃうねん。『ややデカめかも』程度の中途半端やねん……」

「…………」


 綾水のフォローも虚しく。エナジージュードーはがくりと項垂れた。


「リッサは?」

「は?」


 次に。

 マッツン達に指示を出していたリッサの方を見た。


「私はそもそもただのメスの怪人よ。エナリアじゃないし、ミラージュみたいにウインディアの加護も受けてないから」

「いやいや。アタシらからしたらもう、通称も『3人目』やったし。リッサはもう殆どエナリアやで」

「…………あなた達が勝手に言っているだけじゃない」

「なあ綾水?」

「ええ。リッサさんももうわたくし達の仲間ですわよ」

「…………」


 そう言われて。満更でもない表情を浮かべた。なんやカワイイとこあるやんけ、と咲枝は思った。


「まあ無難に、『エナジーアーマー』やろなあ。あの鎧むちゃ格好えよな」

「ですわね。男の子が好きそうな」

「ほいで部分部分は肌も見えんねん。そういうとこまでちゃんと意識しとんねん。そもそもアタシらより全裸率高いしな」

「……あのねえ。それは普通に種族と文化の違いよ。勝手に『エロ』判定しないでくれる?」

「読むんは人間界のモンやからなあ」

「…………分かったわよ。もう。ララ」

「はいリッサ。黒漆女子中学の制服」


 ぶつぶつ文句を言いながら、リッサはララディから制服を受け取って着替えた。黒を基調とした赤いスカーフのセーラー服である。黒タイツで足まで肌を見せないようにした服装。プリーツスカートは短めである。


「黒漆女子って、これまた名門やんか」

「知らないわよ。服の調達はララに任せてたから」

「わたし、『人間』が大好きで。特にリッサは可愛らしいわたし好みの姿に変身するものだから。服を選ぶ際にあれもこれも似合いそうって……。色々と買っているのです」


 ララディが頬を染めてくねくねしながら説明した。


「着せ替え人形かいな」

「私は目立たなければ、つまり人間界では裸でなければ何でも良いから。センスも分からないし」

「……と言って、彼女何でも着てくれるんです」

「…………ていうか登場の度にビジュアル変える気かいな。作者気合入っとんなあ」

「でも本当に、よくお似合いですわ。リッサさん」

「アタシを優遇せえやボケ作者。なんでジャージかフリフリか二択やねん主人公やぞ。綾水でさえ初登場時は私服やったやんけ」

「咲枝さん……? さっきから何を……」

「……ふん」


 ぶっきらぼうに、顔を背けたリッサ。綾水はにこにこ嬉しそうに彼女を見ていた。

 そこで、咲枝が気付く。


「あれ、ララ今、どっから制服出したん?」


 ぬいぐるみサイズである。カバンなどは無い。中学生程度とはいえ人間サイズの服を、いくつも持ち歩くことはできない筈だ。


「……エナジーアニマルは、秘密の収納空間を持っています。その身の中に」

「えっ」

「あっ。こう、小物入れにもなるぬいぐるみみたいな」

「あー……。え、マジか」


 にこりと、ララがいたずらっぽく笑った。


「……いよいよ、意味不明な生物やな」

「人間界の常識は何も通用しませんわね。面白いですわ」

「まあ、せやね……。これからはジャージしこたま詰め込んだろか。ポポに」











「――あったディ。これが、最強の『エナジークリスタル』。純度の高い原石をそのまま加工しただけの、普通の人間じゃ耐えられない出力を誇る……」


 宝物殿。

 その最奥に煌めく、ネックレスがあった。それ自体が淡く発光している。透き通るような透明度の高い、幻想的な宝石の珠。


「ブラストブリング。の、ネックレスだディ」


 ディスプレイに飾られたそれをゆっくりと持ち上げる。


「……綺麗ディ……。きっとサキエとアヤミに、よく似合うディ……」


 その輝きに、ポポディはうっとりしてしまう。

 その背後に影が迫っていることに気付かず。











「よおマッツン。幹部候補はどうだ?」

「!」


 大広間に。怪人が2体現れた。侵略者側の幹部だ。


「(ララ、隠れて)」


 リッサの影に、ララが隠れる。咲枝達はローブを被り直す。


「殺し合わせたんだろ?」

「んー。まあえんちゃう? 全員変身能力持ちやツン」

「ツン?」


 マッツンは何事も無いように対応する。


「ほう……。半分メスか」

「おいおい。その辺でパクったメスとは違う幹部候補だ。手は出すなよ」

「へっ。分かってるよ。残念だが。単純にエナジー出力でオスに劣るメスがここまで来れたってことは、特殊能力持ちだろうしな」


 2体の怪人は咲枝達を見て話している。内容は彼女達の耳にも入っている。


「(本当ほんまこいつら、子供に聞かせられへん会話するわあ……)」

「(というか、女性に対してメスという呼び方が酷いですわ。怪人特有の感性なのでしょうか)」


 咲枝は勿論、綾水もドン引きしている。


「よしじゃあ、ボスに挨拶だ。連れて来いマッツン」

「了解やツン」

「ツン?」

「(ボス!)」


 咲枝は綾水に目配せをした。怪人のボス。幹部どころではない。これまで言及されてこなかったが。

 親玉。ラスボス。今回の元凶。


「どんなやつなんや……。ブラストブリングあったら勝てるんか?」

「ララさん達とのお話で忘れてましたが、ここは敵地ですわよ咲枝さん。緊張感を持って慎重に参りましょう」

「ああ勿論や。まずはポポ。ブラストブリングや。取り敢えずしばらくはこいつらの味方の振りやな。セクハラされたら言いや。アタシがしばく」

「……頼もしいですれけど、わたくしもきちんと声を上げますわ。そう習って来ましたもの」

「緊張感無いわよあなた達……」


 小声で会話しながら、大広間を出る。流石に王城だけあり、人間からしても狭くは感じず、広い廊下を歩く。


 怪人のボスの元へ。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

次回予告!


〈リッサ〉:今更だけど、私はリースス・レーニス。『人間の女の子に変身できるメスの怪人』よ。今ウインディアを支配している怪人とは別の種族だけどね。ララとは長いわ。この子のお陰で、私は強くなれた。


〈咲枝〉:おう。よろしゅうな。3人目。


〈綾水〉:よろしくお願いいたしますわ。リッサさん。


〈リッサ〉:3人目って……。私はエナリアどころか人間でもないのに。


〈咲枝〉:大丈夫や。『そういうの枠』が3人目やねん。大丈夫やで。


〈リッサ〉:意味不明だわ……。


〈みんな〉:次回!

『美少女エナジー戦士エナリア!』

第24話『変身! 怪人のボス、その名はナギ!』


〈ララディ〉:リッサに女の子の仲間ができて、なんだか感慨深い。嬉しいわ。


〈リッサ〉:う、五月蝿いわね……。仲間なんかじゃ……。ふん。

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