第20話

一郎とレオは、中野が住んでいた家があった場所にいた。彼のその両腕には、冷たくなった中野の亡骸が抱き抱えられていた。目の前に一郎が、前に遊びに来た家は無く、黒焦げになった廃墟があった。


「酷い……」近所の家々もほぼ同じような状態で、人が住んでいる形跡はもはや皆無であった。


「誰ですか!?」背後で何かを踏みつけるような音がして二人は振り替える。そこには泥にまみれた二人の小さな子供がいた。


「君たちは?」一郎は中野の体を抱いたまま二人に近く。


「来るな!悪魔!!」足元の小石を拾うと、一郎の顔面をめがけて勢いよく投げてくる。


「危ない!」レオは反射的にその投石を右手で掴んだ。そして今にも二人を殴りそうの勢いで近づいた。


「レオ!やめろ!!」一郎は大きな声で彼女を静止した。レオは一郎に従い、歩みを止めた。


「お、お前達は悪魔だってみんなが……!お前達のせいで父さんや母さんが……!!」子供の一人が急に泣き出した。それを見て一郎は困惑する。


「その兄ちゃんもお前達が殺したんだろ!!」子供は一郎が抱いている中野の亡骸を指差す。


「違う!これは、いやコイツは……、俺の親友なんだ……」言いながらその両面から涙が溢れてきた。


「えっ、なんで……、悪魔のくせに涙を……」子供は、驚いたように目を見開く。


「ごめんな……、俺達がもっと上手く戦えてれば、みんな死ななかったかもしれない……、でも、俺達もみんなを助けたかったんだ……」一郎はゆっくりとしゃがみ込んだ。その手の中で中野は安らかな顔をしている。


「この兄ちゃん……、本当に死んでるのか?」子供達は恐る恐る覗き込む。


「ああ……、死んでる……、死んでるんだ」一郎の肩が震えている。


「一郎……」レオの目にも涙が溜まっているように見えた。彼女も少しずつではあったが、悲しいという気持ちを学習しているようであった。


「本当に兄ちゃん達、悪魔じゃないの?」子供はまだ疑心暗鬼の様子であった。


「ああ、俺達は悪魔じゃない。みんなを……、君たちを守る為に戦っているんだ。もう、誰も死なせやしない。約束する」一郎はもう一度、中野の死に顔を見た。なぜか、その顔が少し微笑んでくれているような気がした。



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