第14話

セクター襲来から数ヶ月が経過していた。


その間も、何度かエクスとセクターの戦闘が繰り返された。一郎のレオへの説得によってか、以前と比較して、エクスも戦い方や場所を選ぶようになり彼らによる直接攻撃で亡くなる人は皆無となった。しかし、時は既に遅し、既に亡くなった者達が帰ってくる訳では無く、一郎達や政府機関、そしてエクスに恨みを持つものは大勢いるのが実情であった。


数台のオートバイが爆音を上げて駆け抜けてくる。後部のシートに座る者は、その手に火炎瓶を手にしている。


「燃やしてやれ!」その言葉を合図に、エクスの足元に、瓶が投げつけられる。もちろん、それによってエクスが傷つく事もなく、無傷であった。エクスは相変わらず、学校の校庭をその居場所としている。すでに、近隣の住人達は避難や疎開をして、町は無人に近い状態になってしまった。その反面、憎しみと腹いせで、エクスへ攻撃をしかける若者達が後を経たなかった。


「お前ら!やめろ!!」警備をしている警察官達がオートバイを静止しようする。しかし、その間をすり抜けて彼ら逃走していく。


「畜生!!全然駄目だ!」彼らは警察の追っ手から逃れて、広場に集合した。


「猛さん、あのロボット、びくともしないよ!」猛のあとから到着した男が悔しそうに呟く。


「きっと、あのロボットのせいで、俺達の町は焼かれたんだ!そして、俺達の家族も……、何とかして、あいつを日本、いや地球から追い出せば、宇宙人もいなくなるはずだ!」猛はヘルメットを投げつける。彼は父、母、妹を亡くしたあの日、逃げていくエクスを追っていく、セクター達を、魂が抜けたような目で見た。

そして、確信した。


あの宇宙人の狙いは、この星なんかじゃない。何らかの理由があって、あのロボットを狙っているのだ。あのロボットを追い出すか、破壊すれば俺達は助かる。そして、あのロボットこそが、仇なんだ。


それから後のセクターからの攻撃も、ほとんどが日本のこのエリアが中心で、それ以外の場所を宇宙人がせめてくる事など皆無であった。

国民の間では、宇宙人の目標は、このロボットなのではないかという意見は広まっていた。


「どうすればみんなの仇が取れるんだ!?」猛は歯ぎしりをしながら拳を強く握りしめた。


「猛さん……」猛の周りには、十人程度の若い男達が集っていた。彼らも、セクターとエクスの戦いに巻き込まれて家族を失った者達であった。彼らは、徒党を組んでエクスをこの町から追い出そうと策略している。しかし、彼らにエクスやセクター、そして政府組織と戦う武器や戦略もなかった。


「お前達、そんなにあのロボットが憎いのか?」その声は唐突に聞こえた。その主を探すと、先程まで人の気配がしなかった場所に、マントを羽織ったおよそ日本人とは思えない男の姿があった。


「あんた誰だ!」猛達は警戒する。


「いくら憎くても、あのロボットを倒す事は、お前達の力では無理であろう。」男の口角が上に上がった。どうやら笑っているようであった。


「なんだ、俺達を馬鹿にしているのか?」バイクに股がったままの、メンバーがスロットルを回して爆音をあげる。彼なりに威嚇しているようである。


「お前達に、戦う武器をやろう」男はマントを翻した。その中から無数の武器らしき物語転がり落ちる。


「なっ、なんなんだ、こりゃ?」メンバー達は目の前に転がる武器を見て驚愕する。それは、警察官が持っている銃が玩具に見えるような物であった。その数、二十丁ほどはある。


「ロボットを倒すのは無理でも、パイロットなら、お前達でも殺せるのではないか?」今度は声を上げて笑っている。


「なぜ、俺達に……、あんたまさか?」猛はこの男の正体に少し勘づいているようであった。


「我々には、あのロボットが邪魔なのだよ。決して君達に悪いようにはしない。あのロボットが憎いのだろう。利害の一致という事だよ」男は淡々と話す。


「ふーん、……そうかい!」猛はおもむろに銃を手にすると、男に向けて引き金を引いた。男に向けて、真っ直ぐな光線が発射されて、マントを切り裂いた。


「猛さん!?」メンバーの一人が驚愕する。まさか、人を殺すなんて……。


しかし、男の姿は消えていた。どうやら、猛が狙撃する前に姿を眩ませたらしい。


「勘違いするなよ、俺はお前達も、憎いんだよ……」猛はポツリと呟く。


「すげー!これ、すげーよ!!」メンバー達はそれぞれ、銃を手にしてテンションをあげる。


「おい皆!これで、あのロボットのパイロット達をやっつけて、宇宙人に差し出して地球から追い出してやろうぜ!」猛は銃を振り上げた。


「おー!」メンバー達もそれに答えるように歓声を上げる。


ここに、反エクス組織である、ガイダーズの眼が芽生えたのであった。

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