第3話

「き、君は・・・・・・・」一郎は立ち上がったまま、動揺を隠せない様子であった。その手は小刻みに震えている。


「貴女は一体、誰!?」その言葉を口にしたのは南であった。彼女はまるで一郎を守るかのように両手を開いて彼の前に出た。


「私はレオ、そういう貴女こそ何者なのですか?」レオは南の顔を見ながら首を軽く

傾げる。


「わ、私は南・・・・・・、一郎君の友達よ・・・・・・・」なんだか、南は恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「レオって、さっき一郎の話していた夢の・・・・・・・・?」中野は目を見開いて、目の前の美少女を見てから視線を一郎に移した。


「一郎!急いでください!!」レオは彼の言葉を意に介さないように前に出た。その瞳は一郎の顔をまっすぐ見つめている。


「急ぐって・・・・・・・・、どこに!?」一郎は彼女の気迫に押され気味なのか声も少し震えていた。教室の中のクラスメイトの視線が、彼からレオへとゆっくり移動して行く。


「あそこです」レオはゆっくりと窓の外を指さす。その先には、暴れる怪獣の姿があった。一連のの騒動により、窓の向こうで起きている怪獣の騒動を一瞬忘れていた。


「あそこって・・・・・・・、あんな場所に・・・・・・・、冗談じゃない!!みんな逃げよう!

」一郎は周りの友人達に声を掛けて教室から逃げるように即す。その瞬間、手首を強い力で掴まれる。その主は、レオであった。


「エクス!おいで!!」レオは一郎の腕を掴んだまま、窓の外に向かって叫んだ。彼女の唐突な行動に教室内の生徒達は面食らったようすであった。


「な、なにあれ!?」窓際から外を見ていた女子が大きな声を上げる。彼女の目には空中から猛烈な勢いで落下してくる巨大な物体が写っていた。


 その後、大きな地響きがした。


「な、なんなんだ!!」その振動で腰を抜かす者もいる。その物体は学校の校庭に落下した様子であった。


 地響きの聞こえた窓の外を見ると、校庭に大きな赤い物体が見えた。それは形を変えて人型に変わっていく。


「ま、また怪獣か!!」生徒達は悲鳴を上げて教室を飛び出していく。


「何やっているんだ!俺達も逃げなきゃ!!」中野は、レオと一郎にきつい口調でいう。


「そ、そうだ!逃げなきゃ!」


「その必要はありません」レオは一郎の体を抱きかかえると勢いよく窓から飛び下りた。


「い、一郎君!!」南が慌てて窓際に駆け寄った。窓から飛び降りった二人の体は当然、校庭に叩きつけられていると思った。しかし、彼らの姿は下には無かった。彼女は当然、2人の姿を探した。そして目の前に映し出された異様な光景に目を見開いた。


 二人の体は宙に浮いていた。そしてゆっくりと先ほど現れた赤い巨人の額に吸い込まれれていった。


「な、なんなんだ!?ここは!」一郎は巨人の中に吸い込まれてからゆっくりと落下した。その先には、コクピットらしきものが姿を見せた。彼はそのシートの腰かけるように着地した。


「ここはエクスの中です。あなたはこのエクスであのセクターを倒すのです」頭の中のレオの声がした。一郎は辺りを見回すが、彼女の姿は無かった。彼は、コクピットの手すりの部分にある球体に手を乗せた。


 突然、一郎の視界が変わった。


「これは!?」一郎は学校の校庭に立っていた。そしてその目前には、ミニチュアのような校舎があった。そして頭上を自衛隊の戦闘機が飛んでいく。


「貴方の意識は、このエクス・フィリアスと完全にシンクロしています。正直、ここまで完璧に同調するなんて奇跡です」レオは歓喜の声を上げる。


「同調・・・・・・・?」一郎は目の前に持ち上げた両手を見て驚く。それは彼の物ではなく、先ほど見た巨人のものであった。


 鳴り響く爆音、振り返れば先ほどの戦闘機が怪獣を攻撃している。しかしその攻撃は全く効果が無い様子であった。戦闘機は次々と、叩き落とされていく。


「あんな原始的な攻撃では、セクターを倒すことは出来ません」レオは呆れた声で呟く。


「原始的って、じゃあ、どうすれば・・・・・・・。まさか・・・・・・・・・」聞かなくてもその答えは解っていた。


 エクスを見つけた怪獣が、雄たけびを上げながら近づいてくる。その勢いに一郎は後ろに少し後ずさってしまう。


「何をしているのですか!?今のあなたなら、なんなセクター簡単に倒せます!」先ほどからレオは、あの怪獣の事をセクターと呼んでいるようであった。


 セクターは突然大きな羽を広げると空に飛びあがってから、エクスめがけて獲物を狩るかのように襲いかかってきた。エクスはその攻撃を半身でかわした。一郎は巨人の体が自分の物のように動くことに驚いた。エクスは強烈なパンチをセクターにお見舞いした。セクターはその体を地面に叩きつけられて悲鳴を上げる。


「一郎!畳みかけてください!」レオのその言葉に触発されパンチを連打した。


「うわー!!」一郎は無我夢中で殴り続ける。もうセクターは絶命寸前であった。「今です!セクターから距離を取って!!」彼女に言われるがまま、セクターから離れた。エクスは胸の前でその両腕を構えた。両腕の表面が強く輝いたかと思うと、強烈な光線がセクターに襲い掛かった。


「ギャー!!」その光線を浴びたセクタ-の体は、溶けるように朽ち果てて行った。そしてその体は跡形もなく姿を消したのであった。


「あの怪獣を・・・・・・・・、倒したのか」エクスの体のまま、一郎は呆然と校庭の真ん中で立ち尽くしていたままであった。




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