第7話 菊寿丸

慧仁 京 京都御所 1521年 師走


俺が待ってるのは菊寿丸。後の北条幻庵だ。

ちょうど今年、近江の三井寺に居るはずなのだ。


元々俺の知識は広く浅くだった。まあ、学校の教科書程度の知識に、興味を持った事をやや深くって感じで。

日本史は好きな方、高校は日本史を選択したし、大河ドラマも戦国時代物と坂本龍馬物は観ていた。

web小説はアニメのゲートから読む様になった。最初は異世界物を読んでいたのだが、戦国時代物を読み始めたら止まらなくなった。

初めは三英傑や信玄・謙信・政宗物を読んでいたのだが、どんどんマイナー武将物に。

読みながらググっているうちに知識チート知識もついて来た所で、この逆行転生だった。

神様、ありがとうございました。楽しいです。

ちなみに好きな武将は、北条三兄弟・豊臣秀長・黒田官兵衛です。今生でも贔屓しちゃいそう。

この時代、命が安いけど、頑張って生き延びたいと思います。


と、そんなこんな考えてると鷹丸が菊寿丸を連れて帰って来た。

手紙を持たせた10日後の暮れも押し迫った頃だった。


「殿下、菊寿丸様をお連れいたしました。」

「うぬ、ご苦労。菊寿丸殿だな、ささ、寒いので中へ、中へ。雅綱、もう一つ火鉢と茶をここへ。」

「御意に」

「鷹丸は大手柄だ。後ほど褒美を使わす。下がって良いぞ。」

「ありがたきお言葉。では、これにて失礼します。」


菊寿丸を部屋に通し対面する。


「それがし、北条菊寿丸と申します。本日は殿下がお呼びとの事で参上仕りました。」

「うぬ、慧仁だ。この度はご足労頂きありがとうございます。」

「いえいえ、勿体なきお言葉。」

「と、挨拶はここまでだ。これから先の話は内密にお願いする。こんな奇妙な赤子の事もな。」

「はっ、畏まりました。」


あ、やっぱり奇妙って思ってるんだ。ハハハハハ。


「俺は1歳だが、内に天八意思兼命様を宿してるそうだ。天照大御神様が枕元に立ってオモイカネ様を解放してくれた。それかららしい、こうして喋れる様になったのは。」

「大変申し上げ難いのですが、お姿と会話の内容が一致しなくて理解が追いつきません。出来ましたら、ゆっくりとお話し頂けませんでしょうか。」

「何だ、其方もか。済まなかった。」


丁度、雅綱が火鉢を、しかがお茶を持って入って来た。


「ちょっと急いたな。寒かったろう、火鉢にあたり、お茶を飲んでくれ。」

「はっ、頂きます。」

「しかは下がっておれ、雅綱は自分の分の火鉢を持ってきて控えておれ」

「御意に」


しばし、沈黙。雅綱が自分の分の火鉢を持って来て控えた所で、話の続きをはじめる。」


「北条の主家はどこだ。」

「公方様にございます。」

「では、北条にとって天皇家とはなんだ?」


ハッと目を見開き、こちらをじっと見つめる。まあ、考えた事も無かったろうな。


「義晴を征夷大将軍に任命するのを止める事となった。高国とも話がついておる。」


菊寿丸をじっと見つめて、話が咀嚼できるのを待つ。


「もう一度聞く。北条の主家はどこだ?即答せよ。」

「天皇家にございます。」

「うぬ、北条は天皇家の臣下、臣従していると思って良いのだな。」

「仰せの通りにございます。」

「うぬ、これからは関東管領など意味が無くなる。戦が増えるぞ。」


菊寿丸を見つめながら一拍待つ。


「もうすぐ正月だ。実家にも帰るのであろう。即決させたが、家に帰ってよく話し合ってこい。臣従するので有れば関東を北条に任せたい。陛下に頼み錦の御旗を下賜して貰える様にも取り計らう。」

「誠にございますか?」

「うぬ、実はの、先日も天照大御神様が枕元にお立ちになり、北条の領内での善政の話は聞いておる。その為だろう。北条領内の金山の在処も教えて頂いた。氏綱本人か菊寿丸が臣従の書状を持って上洛した際に金山の在処を教える。戦は銭だ。伊豆に戻り家内を纏めろ。期限は年明け3月までだ。」

「畏まりました。見事家内を纏めて参ります。」

「うぬ、期待しておるぞ。」

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