第40話 夢のピクニックにご招待

小さい頃からの夢がある。夏の小川へのピクニック。それは第36話でも書いた「のばらの村のものがたり」の影響が大きい。けれどそのままそっくり受け売りだったそこから長い年月が経った。


私は繰り返しそれについて考えている。長らく模索してバスケットを購入、作ってきた料理のいくつかを候補に挙げ、実際に出かけて食器の重さやグラスの高さをチェック。もちろん読んだ本の中でピクニックに行く主人公たちの動きも見逃せない。こうして少しずつ自分の夢の形に近づいたような気がする。


行きたい場所は風通りもよく、ほどほどに陽の当たる小川脇。大きな樹の下に座ろう。持ち物は、美味しいを詰め込んだバスケットに肌触りの良いブランケット、それからお気に入りの本。


夢のピクニックはブランチからスタートする。マルチグレインパンで作るキュウリのサンドウィッチ。胡桃くるみ無花果いちじくのハードパン。バルサミコ酢でマリネしたネクタリンを生ハムで巻いてチキンレバーパテとチーズを何種類か。コルニッションのピクルス、イワシの酢漬け、オリーブ、ピタクラッカー。もちろんよく冷やした辛口のカヴァ。ホームメイドレモネードと発砲水もあればなお良い。


食器類も注意が必要だ。その日のテーマで差し色を替えて楽しむのがいいけれど、基本小さな白い陶器の皿とある程度重みがあってステムの短い小さめゴブレットがベスト。ストレスはいらない、気軽で使い勝手のいいものを。


それから木漏れ日の下でまったりと、葉ずれの音やせせらぎを聞きながら読書したりお昼寝したり。


午後の陽がどことなく気怠くなったら、大人なティータイム。ベリーのミニタルトや生チョコをつまむ。ランブルスコを開けるのも忘れないで。ほろ酔い気分で花を摘んで、小さなカゴをいっぱいにしたら、一番星が輝きだした森の道を帰ろう。ヘンゼルとグレーテルみたいに光る石をたどって。

 

その日、私の夢のあれこれに参加してくれるあなたが、私と同じように心から楽しんでくれることを願ってやまない。

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