第25話 京都ランウェイ

7月26日午前16時10分。異様な集団が京都駅八条口付近に集まっていた。北山高校鉄道研究会の面々である。


まず、東海道新幹線のホームの階下に東西に伸びる通路を、ファッション雑誌から飛び出してきたような、8頭身の美女がポニーテールを揺らしながら、まるでランウェイを歩くかのように颯爽と進む。岸川アリサだ。北山高校の制服を着ているが、さすがファッションモデルだけあって、その着こなしはどこか垢抜けていて、そして、どこか上品でもあった。


いたるところで、「あのポニテの子、めちゃめちゃ、スタイルいいね」「って言うか、あれ、岸川アリサじゃね?」など、たまたま土産物屋で買い物をしていた修学旅行生や喫茶店の前で順番を待つ高校生達がざわついている。


これでショーは終わりではない。


岸川アリサに続いて、今度は6人のぱっとなしない男子高校生達が歩いてくる。アリサを筆頭として、まるでカナダガンの群れのようにV字型の陣形を作って通路を進んでいく。なぜか全員が同じアビエーターのサングラスをかけ、なぜかアリサに負けじとモデルのように堂々と歩いている。個々の弱さを数でカバーする作戦なのだろう。なかには、ファンサービスを煽るように、修学旅行生の前でわざわざ歩みを止め、「京都へようこそ」と話しかける部員までいる。


6人が闊歩すると、やはりあちらこちらで若者たちが顔を寄せて話しはじめた。

「だ、誰、あのお兄さんたち?」「岸川アリサの家来か?」「知らんけど、なんか圧迫感がすごい」「京都って、恐ろしいな」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る