第19話 それでも旅は続く
僕を乗せた松江しんじ湖温泉行きの7000系は、高架線を軽快に走っていく。真田刑事をはじめとする3人の男達の姿はみるみるうちに小さくなっていき、やがて見えなくなった。
僕はショックで動けなかった。予定では、前面展望か後面展望のいずれかを撮影することになっていたが、それどころではない。間違いない。警察が追いかけていたのは僕だ。恐らく、JR出雲市駅での僕の挙動不審な行動が原因だ。
心を落ち着けるため、僕はドアの近くに立って車窓を眺めることにした。
電鉄出雲市駅を出発後、9分後に7000系は
ドアが開くと乗客の大半が下車した。僕はドアから顔を出して、左右に首を振って警察がいないことを確認した。
我ながら怪しいとは思ったが、さすがに公衆の面前で逮捕されたくはなかった。それなら、まだ自首したほうがいい。
『いやいや、待てよ。逮捕やら、自首やら、まるで僕は犯罪者じゃないか。』
僕はかぶりを振って、歩き出した。二面四線(プラットフォームが2つ、線路が4本)の川跡駅はばたでんの駅の中では割と大きな部類に入る。アリサからもらったサングラスをバッグから取り出し、おもむろにかけてみた。といっても、顔を隠すためにサングラスをかけたわけではない。あくまでも日差しが眩しかっただけだ、と僕は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
出雲大社前行の電車は、オレンジ色のボディに白い帯が入った2両編成の1000系だった。元東急の車両だ。僕はビデオカメラで外観の撮影を手短に行うと、早々と車内に入った。
僕と、20人ほどの乗客の乗せて1000系が出発する。インバータの心地よい音色を響かせながら。
沿線には田んぼが広がっていた。その中をオレンジ色の1000系がゆっくりと進んでいく。1駅目の
景色をビデオカメラ越しに眺めていると、あっという間に出雲大社前駅到着のアナウンスが始まり、1000系はスピードを徐々に落としていった。
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